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【特集(Special Feature)】いざ、世界の焼酎へ(1)

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鹿児島県霧島市

「無形文化遺産」とは芸能や伝統工芸技術などの形のない文化であって、土地の歴史や生活風習などと密接に関わっているもののことで、ユネスコの「無形文化遺産保護条約」では、この無形文化遺産を保護し相互に尊重する機運を高めるため、登録制度を実施しています。
日本では伝統的酒造りのほか、歌舞伎や雅楽、和食などが登録されています。

焼酎や日本酒などを造る技術が「伝統的酒造り」として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。
今回は、世界に認められたその文化的価値や焼酎の魅力を紹介します。

日本の伝統的酒造りが令和6年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。伝統的酒造りとは、カビの一種であるこうじ菌を使い、蒸したコメなどの原料を発酵させて焼酎や日本酒、泡盛、本みりんなどを造る日本古来の技術。また、日本のさまざまな行事に酒が不可欠であることや、酒造りが地域社会の結束に貢献している点なども、登録に値すると評価されました。
本格焼酎は、酒税法上で単式蒸留焼酎に分類される蒸留酒の一種です。「酒として一定の地位を築いた焼酎ですが、それはあくまで国内の話。ジンやウオッカなど世界の四大スピリッツ(蒸留酒)には及びません。しかし今回、世界に『焼酎』という名前が出たことで世界進出のスタートラインに立てたのは喜ばしい」と話すのは、鹿児島大学農学部附属焼酎・発酵学教育研究センター長の玉置尚德(ひさのり)さん(64)です。
「今回のユネスコ登録は、伝統的な酒造りとは何かを知ってもらう良い機会であり、世界に発信されたことで輸出の増加だけでなく観光業にも良い影響をもたらすことが期待されます。例えばフランスのワインツーリズムのように、それぞれの土地の蔵元を回って焼酎を楽しむ観光が広まってくる。日本人向けだけでなく、日本の珍しい物に敏感なインバウンド(訪日外国人)にもアピールできるのでは」と笑顔を見せます。

■どこから来たのかこうじ菌
日本で千年以上前から続く伝統的酒造りは、杜とうじ氏や蔵くら人びとたちが日本各地の気候風土に合わせて築き上げてきました。玉置さんは「カビの一種であるこうじ菌は韓国や中国にもありますが、使い方が違います。日本では蒸したコメにこうじ菌を振りかけて一つの菌だけを増やす純粋培養で酒を造ります。一方、韓国や中国は日本と全く異なる文化で、穀類を混ぜ合わせた物をれんが状に成形して自然の中に放置し、そこに取り付いたカビや菌、酵母などで酒を造ります。もし酒造りが韓国や中国から入ってきたのであれば、同じような造り方になっていたはず」と話します。
では、日本のこうじ菌は一体どこからやってきたのでしょうか。「稲の穂先に稲玉(いなだま)と呼ばれるカビが生えることがあり、それが付くと豊作のしるしだといわれていたそうです。そのカビの中から見つかったこうじ菌のうち酒造りに適したものが家畜化され、代々受け継がれてきました。今では日本を代表する『国菌』として認定されたこうじ菌。国菌を使って造られる焼酎は、実は日本を代表する国酒なんですよ」

■焼酎文化を未来へ
人口減少や少子高齢化、ライフスタイルの変化や嗜し好こうの多様化で酒類全体の消費量は減少傾向にあり、焼酎も例外ではありません。さらに近年は物価高騰やサツマイモ基腐(もとぐされ)病の影響による材料不足、後継者問題など、焼酎業界を取り巻く環境は厳しい状況が続いています。一方で、課題が多いからこそ、それを打開する新たな挑戦が生まれます。玉置さんは「焼酎の魅力は、それぞれの蔵の考え方や技術次第で、同じ造り方でも味が異なること。試行錯誤を繰り返すことで課題に適応し、さまざまな焼酎が生まれてきたはずです。これまで蓄積した知識や技術をきちんと後世につないでいってほしい」と力を込めます。
鹿児島には110を超える焼酎蔵があり、それぞれ個性的な焼酎を造っています。「ユネスコ登録をきっかけに歴史や文化という背景を学んでみると、味わいも深まるのでは」

鹿児島大学農学部附属焼酎・発酵学教育研究センター長
玉置尚德(ひさのり)さん(64)
京都市出身。鹿児島に来て以来、酒は趣味から仕事に。鹿児島市在住。

[INTERVIEW]酒造りは街造りいつまでもこの地で
日當山醸造(ひなたやま)(株)杜氏(とうじ)
濱崎真(まこと)さん(57)

飲酒人口の減少などの影響で売り上げが落ち込み、経営の悪化が続いて杜氏(とうじ)は不在となってしまい、設備なども不足。廃業寸前のところまで深刻化しましたが、新社長の「街から酒蔵の灯を消さない。酒造りは街造りである」という信念の下に事業再建が進み、奇跡的に廃業を免れました。これからも蔵人(くらびと)一丸となって酒造りに向き合い、応援してくださる人たちの期待を裏切らない酒を醸し、創業から変わらぬ味をこの日当山の地で守っていきます。

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