学芸員オススメ!No.90 市立美術館の逸品

5／88

■橋口五葉(はしぐちごよう)『髪梳(かみす)ける女(おんな)』
□ジョブズも愛した五葉の新版画
1984年、スティーブ・ジョブズによるパソコンの新機種発表の場で、長い黒髪を梳く日本女性の画像が映し出されました。日本の新版画や美意識が、世界に向けて発信された瞬間でした。この作品は五葉の美人画の代表作で、長く豊かな髪を梳くしぐさや、首から肩にかけての流麗で美しい線が描かれています。
本市出身の画家、橋口五葉は1881年に樋之口町に生まれ、夏目漱石の「吾輩ハ猫デアル」の装丁デザインや浮世絵研究、日本画、洋画などさまざまな分野で才能を発揮しました。最晩年、新版画作家として己の道を見いだすも、1921年、満39歳で急逝しました。写実的な人体描写と、木版画の線の美が融合した五葉の作品は、浮世絵の手法を取り入れながらも近代的な感覚に満ち溢れ、今もなお清新な魅力を放っています。

※9月24日(日)まで開催する「夏の所蔵品展」で展示しています

問合せ：市立美術館
【電話】224-3400【FAX】224-3409