■山口長男(たけお)『作品B』
□あなたには何が見えますか?
山口長男は日本の抽象画の先駆者で、戦後はベネチア・ビエンナーレなど多数の国際展でも活躍しました。1960年には、草間彌生(やよい)らとグループ展「日本の抽象」も開催しています。
山口は鹿児島県出身の父の下、裕福な家庭で育ちました。幼い頃から絵画に親しみ、東京美術学校に入学し精力的に学びます。1927年からは4年間フランスに滞在し、独自の造形を追求したロシア人彫刻家オシップ・ザッキンの影響を受け、以後、描く対象の骨格や実体を捉えようと、より抽象的な傾向を強めていきました。
『作品B』は、1939年に描かれた初期作品です。後に山口は「この頃私は天体図や顕微鏡図、大きな自然体に心を引かれた」と述べています。灰色の空間に楕円(だえん)やくの字形の物体が漂う本作は、まさに顕微鏡越しに見る世界のような独特の浮遊感や奥行きを感じさせますが、無個性なタイトルは見る者に解釈を委ねているようでもあります。
※12月1日(日)まで、「秋の所蔵品展」で展示しています
問合せ:市立美術館
【電話】224-3400【FAX】224-3409
<この記事についてアンケートにご協力ください。>