■和田英作(わだえいさく)『田園の夕暮れ』
□自然へのまなざし たそがれの色彩
どこか懐かしい田園風景、人影のない田んぼは夕闇に包まれています。遠く山並みの向こうに夕日が沈んでいくのでしょうか。空は水色から浅黄色、淡いだいだい色へと仄(ほの)かに移り変わり、浮かんでいる雲はあかね色に染まりながらたなびき、木立は夕日の逆光からさらに薄暗く、辺りは静寂です。本作は間もなく日が沈むたそがれ時、その一瞬を写実的に繊細な色彩で表わし、夕暮れの光とその陰影は叙情的に描かれています。
和田英作は現在の垂水市に生まれ、黒田清輝らが設立した天真道場に入門し、白馬会結成に参加。渡欧時に黒田の師であるラファエル・コランの指導を受け、外光派の画風を学びました。生涯において自然を見つめ描き続けた和田は、刻々変化する微妙な光を描き分け、陰影の表現を追究しました。
本作は7月7日(日)まで「初夏の所蔵品展」で展示しています。和田は穏健な作風といわれていますが、自然への真摯(しんし)なまなざし、その挑戦をぜひご覧ください。
問合せ:市立美術館
【電話】224-3400【FAX】224-3409
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