■黒田清輝(くろだせいき)『養母の像』
□画家・黒田の誕生に影響を与えた養母
本市高見馬場に生まれた黒田清輝は、伯父・黒田清綱の養子となり、6歳で上京します。政治家の養父の下で成長した少年は、自身も法律を学んで政治家になるため、18歳で本場のフランスへ留学しました。パリで画家を志望するようになるのですが、画業転向を渋る養父に対し、渡仏時に、旅の気晴らしに画材を持たせたのが本作品に描かれた養母・貞子でした。
1898年の作品ですが、同時期に描かれた《養父の像》と比較すると、4分の1ほどの大きさです。より父親を敬う当時の日本の慣習のためと考えられますが、それは留学中の黒田が両親に送った手紙からもうかがえます。養父には厳かな漢文調の丁寧な文体で、養母にはほとんど平仮名で書き送っていましたが、手紙の分量は圧倒的に養母宛ての方が多く、文面からは細やかな愛情が伝わってきます。
留学中の代表作《読書》では恋人マリアを描き、帰国後の名作《湖畔》では、照子夫人をモデルにしています。いずれも画家・黒田の生涯に欠かせない女性たちですが、養母・貞子の存在も大きかったことが分かります。
※9月1日(日)まで開催する「特別企画展」で展示しています(本紙12面)
問合せ:市立美術館
【電話】224-3400【FAX】224-3409
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