■黒釉貼付龍文半胴(こくゆうはりつけりゅうもんはんず)
□素朴で重厚、これぞ薩摩の黒
薩摩焼には、江戸時代に藩の御用品、明治時代には輸出品として注目を集めた白薩摩(白もん)と、庶民の日用品の黒薩摩(黒もん)があります。この「黒もん」の器は、19世紀後半に苗代川(現在の日置市東市来町美山地域)で作られました。鉄分の多い火山性の土や鉄釉(てつゆう)が用いられて黒く焼き上がっており、口は広く、胴は丸く曲線を膨らませながら底にしぼんでいくカブのような形です。全体的に重厚で、胴回りの龍の模様も相まって強さを感じさせますが、どこか温かみもあります。梅や大黒天などの模様も見られますが、容器として甘酒を作るときに使われていたことから、「甘酒半胴(あまざけはんず)」とも呼ばれていたようです。
「黒もん」は民藝(みんげい)運動の父である柳宗悦(やなぎむねよし)も高く評価し、その素朴な美しさを認めています。原料が貴重で繊細な見た目から重宝された「白もん」に対し、歴史が古く日用雑器で使われて庶民に愛された「黒もん」は、生活の中にある美として今でも私たちを魅了しています。
※2月16日(日)までの「冬の所蔵品展」などで展示しています
問合せ:市立美術館
【電話】224-3400【FAX】224-3409
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