文字サイズ
自治体の皆さまへ

次世代につなぐ うなづき100年ヒストリー

44/49

富山県黒部市

■宇奈月温泉木管事件

宇奈月ダム湖畔に「宇奈月温泉木管事件碑」が建立されています。開湯間もない昭和初期、宇奈月温泉の存亡がかかった訴訟を伝える碑です。
宇奈月温泉は7キロ上流の黒薙温泉から引湯していますが、引湯管が通っている土地に利用権を得ていない2坪(約6平方メートル)ほどの所がありました。その土地を買い受けた人物Xが(1)引湯管を撤去するか(2)周辺の土地も含めて高額で買い取るか︱を温泉経営にあたっていた企業(黒部鉄道)に求め、裁判に持ち込んだのです。
第一審の魚津区裁判所、第二審の富山地方裁判所ともにXの請求を退け、さらに現在の最高裁判所にあたる大審院が1935(昭和10)年10月5日、上告を棄却し、判決が確定しました。急傾斜の土地で利用価値のないのに請求を認めて引湯管を撤去すれば宇奈月温泉と住民に致命的な損害を与えることになるなどとして、請求は権利の濫用である、というのが理由でした。
「権利の濫用」は許さないことを明確にした重要な判例となり、1947(昭和22)年の民法改正で明文化されましたが(民法第一条)、この訴訟は「宇奈月温泉(木管)事件」として、法律を学ぶ授業では最初に紹介されるほど有名になりました。
係争の舞台となった土地は宇奈月ダムの建設で水没し、今はその上部近くの市道脇に事件碑があり、「民法の聖地」として訪れる人も少なくありません。

文・宇奈月温泉開湯100周年事業実行委員会 実行委員長 河田 稔

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU