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名張市史だより NABARI HISTORY LETTER No.21

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三重県名張市

■「亥(い)の子(こ)餅(もち)」行事
名張市の主に西部地域(赤目・錦生地区)では、地区の子どもたちが縄を何本もつけた石で、唱え事をしながら地面を突いて地区を廻る「亥の子餅」行事が行われているのをご存じでしょうか。
この行事の由来は、亥の月(旧暦10月)の最初の亥の日の亥の刻(午後9時〜11時)に餅を食べて無病のまじないをする中国古来の俗信からきています。日本には平安時代に宮廷に伝わり、この日に猪の子に似せて作った亥の子餅を天皇に献上する儀式を行いました。これが次第に民間に伝わり、除病・子孫繁栄を願う風習として広がりました。
農村では時期的に秋の稲の取入れ後にあたるため収穫後の祭りとして普及しました。また、この行事は猪の多産にあやかり安産・子宝の祈願、あるいは石で地面を突くことにより猪やモグラの害を防ぐ意味があるともされており、西日本の農村によく見られます。
名張市内の「亥の子餅」行事では、現在の行事の内容になった時期は不明ですが、10月上旬の夕方から丸石に縄を何本か結び付けたものを持って地区の子どもたちが「亥の子餅」行事を実施します。石は、神社などで見られる石灯篭(いしとうろう)の一番上にある宝珠(ほうじゅ)の部分を使います。そして、訪れた家の庭先で「亥の子の唄」を歌いながら地面を石で突き、家の人から祝儀をもらう、という流れで地区の家々を数時間かけて廻ります。また、唄の歌詞は地区によって少しずつ違います。
現在では少子化により途絶えてしまった地区もありますが、この行事を復活させようとする試みもあります。長年地域に伝わってきた行事がこれからも地区の次世代に継承されることを切に願います。

編集発行:
名張市郷土資料館(教育委員会文化生涯学習室)
〒518-0737 名張市安部田2270番地
名張錦生ふるさとパーク内
【電話】64-7890

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