菰野町のこれまでの歩みの中で育まれてきた貴重な資源の数々それぞれの歩みの中で培われてきた資源を次の世代へと繋いでいく「次世代へのバトン」- 次世代に想いを託し、受け継ぐ姿を特集します
■民話をモチーフにして創作
菰野町で語り継がれてきた多くの物語。誰にとってもなじみのある話からあまりなじみのない話まで、菰野町ではさまざまな物語が存在していますが、形として残さなければ消えていってしまう、そんな物語も数多くあります。菰野町にとっての財産ともいえる物語を絵本という形にして後世に残す「手づくり民話絵本コンクール」が毎年開催されています。
実行委員会で決定される題材は、「菰野富士」「福王山の天狗」「竹成の五百羅漢さま」など菰野町で古くから語り継がれる物語ばかりで、コンクールではお絵かきの部と絵本の部が開催されています。特に絵本の部では、題材となる民話をモチーフにしつつ、ストーリーを自由に改変することが認められており、例年、変化に富んだ素晴らしい作品が生み出されています。
■絵本を通して平和を学ぶ
第8回を迎えた今回、テーマとして選ばれたのは、かつて竹永地区にあった飛行場を題材にした「ひこうき」です。昭和20年8月に完成した竹永陸軍特攻用飛行場は、滑走路の長さ1500メートルにも及ぶ飛行場で、秋田県や山形県の東北出身の兵士が建設に携わっていたといいます。第二次世界大戦時に、特攻用機の離陸場として建設が進められていましたが、完成した後に終戦を迎えたため、幸いにもこの飛行場から特攻機が飛び立つことはありませんでした。飛行場の周辺には戦闘指揮所用の防空壕も遺されており、現在もその姿を見ることができます。
手づくり民話絵本コンクールではこれまで地域に伝わる空想上の物語を取り上げる場合が多かったのですが、今回はロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルとの戦闘が直近であったことから、菰野町でも戦争に関わる物語が残っていることや平和の大切さを少しでも実感してほしいとの想いでこのテーマが選ばれました。
これまでとは少し趣の違うテーマではありましたが、多くの応募作品が集まり、絵本の部では高橋紘実(たかはしひろみ)さん(四日市市)の「ひこうき」が最優秀賞に選ばれました。高橋さんの作品では、ゴム動力の飛行機模型を飛ばそうとする少年が戦時中に飛行場を建設するため動員された「おっちゃん」と呼ばれる軍人の亡霊と出会うという構成でストーリーが仕上げられており、少年とおっちゃんとの不思議な関係性と平和の有難さが丁寧に描かれています。
今回のテーマにあわせて、小学生以下が参加するお絵かきの部では飛行場があった場所でお絵かき会を開催するなど、絵本の中の世界だけでは完結しない取り組みも実施されています。
菰野町の財産とも言うべき物語の数々を、絵本という形にして後世へ紡いでゆく。菰野町への郷土愛と懐かしい原風景が魅力として詰まった作品たちが、毎年、絵本となって世に送り出されています。
絵本の町づくり文化プロジェクト実行委員会 実行委員長
三浦伸也(みうらしんや)さん
〈COMMENT〉
これまでテーマにした物語は私も知らなかったお話も多くありました。参加者の皆さんには知らないテーマのお話に触れ、実際に現場を訪れてもらったり、自分で物語の背景を調べてみたりすることで、郷土に関して理解を深め、菰野町への郷土愛向上に繋がっているように感じます。制作した絵本を通じて町外にも菰野町のお話を広められる良い機会にもなっていると思います。
◆令和6年1月21日 第8回菰野町手づくり民話絵本コンクール 表彰式
菰野町手づくり民話絵本コンクールの表彰イベントが町民センターホールで行われました。お絵かきの部では伊藤光一(いとうこういち)さん(菰野第二区)の「命」が、最優秀賞に選ばれました。
◆最優秀作品を製本化
各冊1,200円
手づくり民話絵本コンクールの絵本の部最優秀作品は毎年、製本化されています。今回、最優秀作品に選ばれた「ひこうき」も町民センターで購入することができ、町図書館で閲覧できます。
事務局・問合せ:NPO法人菰野町スポーツ・文化振興会
【電話】391-1117
【FAX】391-1191
手づくり民話絵本コンクールHP:QRコードは本紙P.3をご覧ください。
▽未来へ繋ぐバトン(1)
田口新田区 今なお続く元服祭
現在、三重県内で唯一継承されているといわれる田口新田区の元服祭。元服とは、男子が15歳になると前髪を剃り、名前も改め成人になったことを祝う習慣で、かつては成人を祝って「元服式」が各地で行われていました。田口新田区では、区内の15歳になった子どもを対象に「元服式」が区の伝統行事として連綿と現在まで継承されており、毎年1月初旬に開催されています。
▽くぐり門を新調
元服祭にあわせてくぐり門(茅の輪)が令和5年12月に新調されました。合格祈願、無病息災を願い、令和6年1月8日に行われた元服祭でお披露目され、多くの若者たちがくぐりぬけていました。
※詳細は本紙P.2~3をご覧ください。
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