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【特集】次世代へのバトン(3)

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三重県菰野町

■素材を生かし菰野町でしか味わえない味を提供したい
早川酒造

自分が携わってきた事業をいかにして後世に引き継ぐかその葛藤の中、代替わりや事業継承で新たな風を取り入れ挑む事業者の姿を追いました

◆修行の末に完成させた「田光」
創業1915年、小島区にある酒蔵「早川酒造」。令和5年9月に代表社員を四代目の早川俊人さんに交代し、代表銘柄「田光」の生産にさらに力を入れています。
大学卒業後、家業を継ぐことも視野に入れ、父とともに働きはじめた早川さんは「父の背中を見ながら育ち、生活の一部に酒づくりがあった。家業を継ぐことは自然な流れだった」と振り返ります。転機となったのは25歳の頃、修行と思い訪れた山形の酒蔵での経験でした。「修行で得た知見を菰野町の水や米ならではの仕込み方に落とし込んで酒をつくってみたい」そう強く感じた早川さんは早川酒造で平成21年、日本酒「田光」を完成させました。

◆さらなるおいしさを求めて
田光の完成後も品質を高めるために空調設備やタンクの新調などを年々重ね、麹(こうじ)にムラが出ないよう麹箱を特注したり、室内の温度管理をアプリで行ったりと味の個性をより深化させようと試行錯誤を繰り返してきました。経営的に苦しい時期もあったそうですが、商品コンセプトをしっかり構築し、味を追求してきた結果、「田光」は早川酒造の主力銘柄となり、年間3000本程度だった出荷本数が現在では4万本まで拡大したそうです。「父の妥協しない姿から学び、早川酒造の歴史に恥じない味を追求してきた。価格以上の菰野町でしか味わえない味をさらに提供していきたい」と今後の展望を語ります。「地下50メートルから汲み上げた鈴鹿山麓の超軟水の伏流水を使用し、地元田光で生産された酒造好適米「神の穂」を使用しての酒づくりも行っている。この菰野町の魅力ある資源を生かした酒づくりを続け、地元の誰もが誇り、贈り合える酒となれるよう取り組んでいきたい」と想いを語っていました。

合名会社早川酒造 代表社員兼杜氏
早川俊人(はやかわとしひと)さん
〈COMMENT〉
米農家、菰野町の自然、家族、さまざまな方やものに支えられて生産が続けられてると実感しています。地元に愛され地域に貢献できなければ我々、蔵元は酒づくりに向き合えないと思っているので、生産者、消費者、地域など全てが「おいしい」という気持ちで繋がり、良い循環が起こるような酒づくりを心掛けていきたいと思っています。菰野町が誇る地酒となれるよう、これからもただただよりよいお酒をつくるという想いで向き合っていきます。

▽DATA
合名会社早川酒造
住所:小島468番地
【電話】396-2088
【FAX】396-2338

■地場産業の灯(ともしび)を消さないために
萬古焼窯元の新たなスタート

◆一代で築き上げた技術と実績
平成4年に永井区で創業した萬古焼の工房「クラフト石川」。代表であり窯元である石川哲生さんは26歳のとき、転職を機に未経験の窯業の世界に飛び込みました。技術的なノウハウは全くない状態でしたが40歳で現在の工房を立ち上げ「最初は機材も何もない借金だらけの状態からスタートした」と振り返る石川さん。それ以来、31年間の永きにわたり夫婦二人三脚で「クラフト石川」製の萬古焼を世の中に送り出してきました。積極的に全国各地のイベントに出店し、工房の隣には作り上げた製品を購入できるショップも併設し、遠方からも購入者が訪れるなど、ファンの多い人気ブランドにとなりました。
71歳となった令和5年、年齢と後継者がいないことを理由に一度はブランドの消滅を決意しました。これまで培ってきた技術も継承者がいないため、引き継ぐことを諦め、工房も機材も不要なものは売り払う覚悟でいたといいます。そんな折、事業継承を名乗り出たのは、同じく町内で萬古焼を生産する川北区の「山口陶器」でした。

◆こだわりも含めて事業継承
石川さん自身から技術や工房の引き継ぎ作業を行うため、山口陶器の従業員がクラフト石川を訪れるようになりました。「同じ萬古焼でもクラフト石川では成形から釉薬作り、焼き上げまでの工程を全て一人で行う。分業制で取り組む現在の窯業とは大きく違うこともあり、うまく引き継げるか不安もあった」と石川さんは語りますが、引き継ぎから1年が経過した現在は「ちょっとしたこだわりまで見逃さず引き継いでくれている」と満足そうに語ります。そして、令和6年1月1日から「クラフト石川」は新たなスタートを切り、山口陶器の販路を活用して「クラフト石川」の製品が菰野から世界へ出荷されています。

クラフト石川
石川哲生(いしかわてつお)さん
〈COMMENT〉
ここまで作り上げてきたブランドを誰かに引き継ぎたいという気持ちはありましたが、信用のある方でないと引き継げないと思っていました。そこで今回の事業継承の話があり、販売先も今後は全然違うかもしれませんが、自分のブランドが残り生産が続けられていくことを大変有難く感じています。萬古焼という地場産業の灯を消さないよう、今後も引き継ぎ役となる、そんな仲間がさまざまな事業で増えていったら嬉しく感じます。

▽DATA
クラフト石川
住所:永井3029番地
【電話・FAX】396-3731

※詳細は本紙P.6~7をご覧ください。

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