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中村欣一郎市長の山椒(さんしょう)は小粒(こつぶ)でも… Vol.65

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三重県鳥羽市

◆いつでも、どこでも、誰でも、少しでも

5月、新年度が始まってから1か月がたちました。子どもたちは元気に登校しているでしょうか。
ついこの前まで、私の住む地区には子どもたちの登校を見守る「タッチのおじさん」がいました。おじさんは毎日毎日、雨の日も風の日も通学路の横断歩道に立ち、子どもたちとタッチを交わしました。やさしくタッチを交わす子がいたり、中には何かをぶつけるように思い切りグーの手でタッチをする子がいたり、伏し目がちで目を合わせなくても、タッチだけは忘れない子がいたそうです。おはようの挨拶(あいさつ)はもちろん、「朝ごはん食べてきたか?」「今日はちょっと遅いやんか」…とひと声かけるのを忘れません。
私は、地区の青少年育成会で一緒に活動させていただきました。20年ほど前から、育成会事業の存続や、通学路の安全のことが話題になっており、その中でどこからともなく出てきたのが「どの子もうちの子」というフレーズです。保護者以外にも響く、地域全体で子どもを見守る感じでええなぁということで、さっそくのぼりとジャンパーを作りました。色はオレンジ色にしました。
そして、私たちはそこにひと工夫しました。のぼりは立てっぱなしにせず、月のうち5日、15日、25日と5のつく日に立てる。場所は通学路が望ましいが、どこでもいいことにしました。一日早かろうが、数日間しまい忘れていようが気にしません。ここに絶対立てなければならない、ということにもこだわりませんでした。ジャンパーも賛同者を募って提供しました。いつ、誰が着るとの決まりはありません。買い物でもウォーキングでも畑仕事でも外出の際好きなときに羽織ってもらえればいいのです。のぼりを立てたり、ジャンパーを着たりすることでその人の「地域の子どもたちを思う」気持ちにスイッチが入れば、それでいいのだと考えました。つまり、「いつでもどこでも誰でも少しでも」の精神です。
この完璧を求めない精神は、負担感なく、継続しやすいと評判になりました。タッチのおじさんは、県内各地に赴き、教職員に講演し、なんと県議会の委員会に招致されて意見を述べる機会もありました。しかし20年を経てタッチのおじさんが亡くなられ、さすがにオレンジを見かけることが少なくなりました。ちょっとさみしいです。私も初心に返って、こどもの日にはのぼりを立てねばと思っています。おっと、「立てねば」という義務感では趣旨に反します。タッチのおじさん(故中世古光正氏)を思って「立てたいなぁ」と思っています。

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