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自治体の皆さまへ

やる以上は楽しむ それが居母山のルール(1)

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京都府福知山市

■結成から41年 会員数は40人を超える
夜久野町直見の谷に、およそ3か月に一度、田植えや稲刈り体験などのイベントを自ら企画し、運営しているグループがあります。
地元の山の名前から「居母山(いもやま)クラブ」と名付けられたそのグループの平均年齢は、約70歳。
会長の飯尾恒洋(いいおのぶひろ)さんは、結成当時をこう振り返ります。
「わしが夜久野へ移り住んだときに、気の合う5~6人で山登りのメンバーを作ろかと言うたのが始まりやった。みなさんみなさん寄ってきよるじゃ。寄ってきたもんがこんなことしたい言うて。それから41年、わしももう80歳や」
地元の登山愛好家が集い結成された「居母山クラブ」も、今では40人以上の会員を抱える大きなグループに。会員が持ち寄ったアイデアを実現していくうちに、山登り以外のイベントが増えていきました。

■イベント運営は全部自前 大事なメンバーの存在
イベントは年に5回。5月は田植え、8月は泥んこドッジボール、10月には稲刈りなど、居母山では一年を通じて様々なイベントが行われます。
企画・準備・運営の全ては、居母山クラブのメンバーが担当。昼食に無料で振る舞われるジビエや野菜も、メンバーが無償で持ち寄り、調理も自前で行います。
参加者は年々増え、今年8月に開催した泥んこドッジには、地域内外から150人を超える参加者が集まりました。
どんなに参加者が増えても、居母山クラブのメンバーは、訪れたすべての人に分け隔てなく話しかけます。
「全部タダで飯も食えて、こんなことやっとる奴は他におらんど」と笑う飯尾さん。
やる以上は楽しむ。それが居母山のルール。楽しむことと同じくらい大事なものは、活動を支えるメンバーの存在であると、飯尾さんは続けます。
「クラブができて41年になるわいな。メンバーが楽しんでやってくれとるさかいに続くんや」
自身が会長として居母山クラブを続けられるのも、メンバーのおかげだと言います。
「メンバーがおってくれるから。それだけのもんです」

みなさんが楽しんですりゃええじゃ。
みんなで面白う寄って遊ぼかいうだけの話。
居母山クラブ会長 飯尾恒洋(いいおのぶひろ)さん(80)

■来てもろて、わいわい言いもって—
成功しようとしまいと、みんなでやったらええ。
そしたら、その結果がついてくるんや。

◆田んぼアートと五右衛門風呂 小さな田舎に賑わいが戻る
居母山クラブでは、田植え時に、その年の世相を反映した題材で「田んぼアート」を実施しています。その取り組みは様々なメディアで紹介され、市内外から多くの人が田んぼの上に浮かび上がるアートの見学に訪れます。
田んぼアートを見おろせる展望台には、会員手作りの五右衛門風呂が。イベント開催時には湯を沸かし、田植えや泥んこドッジボールで疲れた体を癒せるよう、参加者らに開放しています。
イベントには、地元だけでなく、大学生や旅行者、海外の国籍を持つ人も多く集まります。中には、遠方からリピーターとして何度も訪れる人々も。昔ながらの日本文化を懐かしみ、居母山クラブのメンバーや他の参加者との交流を楽しんだ人々は、イベントの度に居母山へ戻ってきます。

「地域の人に言われとるんや、何もない田舎の村を、お前が元気にしてくれたと。少しは褒めてもらっとんか知らんけどな」
少し照れ臭そうに振り返る飯尾さん。夜久野に移り住んで41年が経ち、人口が減っていくまちを眺めながら、こうつぶやきます。
「しかし、みな若い者が出ていきよんじゃ」

■心のふるさと
居母山へ、おかえり

◆夜久野ってええなと思ってもらえたらそれでええ
「わしらは、夜久野をどうしたろなんて、そんな大それた考えはない。とにかく自然に、気に入ってもろたら入ってきてくれたらよいし、来た人に、夜久野ってええなと思ってもらえたら、それでええ」
自らが楽しみ続けること、それこそが、地域のにぎわいが長く続く秘訣だと、飯尾さんは続けます。
「来てもらう人は拒まず、去る者も拒まずでやっとるさかい。来てもろて、わいわい言いもって。それがええんちゃう。やからみなさんおってくれると思うんや」
5~6人で始まった登山グループ・居母山クラブは、時間とともに形を変え、気づけば地域内外の多くの人が楽しみながら心を通わせる、誰しもにとっての居場所となりました。
夜久野の小さな谷から生まれたつながりの輪は、地域の誇りとなり、世代や地域を超えて、これからも広がり続けます。

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