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緑の伝統(1)

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京都府福知山市

鮮やかな濃緑色と、艶のある表面、少し曲がった形が特徴的な「万願寺甘とう」。とうがらしなのに甘く、肉厚で食べやすいことから「奇跡のとうがらし」とも呼ばれています。
現在、本市では、万願寺甘とうを生産する新規就農者が増加傾向にあり、業界はさらなる熱を帯び始めています。
今月号では、地域が誇るブランド産品「万願寺甘とう」と、そこにかける生産者の熱い思いに迫ります。

■固定種にこだわり伝統を受け継ぐ
「万願寺甘とう」の原種は、今から約100年前、舞鶴市万願寺地区で誕生しました。
固定種にこだわり、毎年種を採取して次の世代を育てるため、現在でもその栽培エリアは、舞鶴・綾部・福知山の一部地域に限られています。
一般的な「万願寺とうがらし」は全国で流通していますが、甘みの強い「万願寺甘とう」ブランドを名乗り出荷できるのは、この地域で伝統を受け継ぎ、厳しい基準をクリアした「ほんまもん」だけ。
中丹地域から出荷される「万願寺甘とう」は、今や夏の京野菜を代表する逸品として、全国で人気の存在となっています。

■品質の高さが地域の財産に
2017年6月、「万願寺甘とう」が、京都府で初めてGI《地理的表示》に登録されました。
GI《地理的表示》とは、地域ならではの品質や特性がある地域産品の名称を、地域の財産として国が保護する制度。
「万願寺甘とう」は、全国に誇れる地域の逸品となっています。

■京の伝統野菜“万願寺甘とう”
「万願寺甘とう」は、地域団体商標として登録された商品名です。
(登録:第5150710号|権利者:全国農業協同組合連合会)
1989年には、優れた品質が保証され、安心・安全と環境に配慮した生産方法に取り組む農産物にのみ認められる「京のブランド産品」の第1号に認定されるなど、京都を代表する京野菜の1つとなっています。

■知れば知るほど奥が深い万願寺甘とうの世界
○〔形〕選ばれたものだけが名乗りを許される「万願寺甘とう」ブランド
細長くて少し曲がっていることが「万願寺甘とう」の特徴。収穫時に、長さや曲がり方、色つやなどを細かくチェックし、選果基準と出荷規格に沿って「秀品」「優品」「良品」、規格外の「並品」「外品」にランクづけされます。選果された「万願寺甘とう」は、福知山市と舞鶴市にある協同の検品場に持ち込まれ、最終検品を経て基準をクリアしたものだけが、「万願寺甘とう」として全国へ出荷されるのです。

○〔味〕見た目はシュッと、でも中身は繊細。肉厚で甘みのあるとうがらし
柔らかくて肉厚で種が少なく、「煮る」「焼く」「揚げる」といった幅広い料理に活用して食べやすい。とうがらしなのに辛くなく甘みがあるのも「万願寺甘とう」の大きな特徴です。外側に小さい横シワがあるものが柔らかい実の目印なんだとか。

■“万願寺甘とう”と“万願寺とうがらし”
もともとは、舞鶴市万願寺地区で栽培されていた「ゆきのさんのトウガラシ」が始まりです。郊外へ販売するタイミングで、生産地名から「万願寺とうがらし」と命名されました。
その後、種苗会社が形状を似せた「万願寺タイプ」の品種を開発。産地や種は違うものの、形がよく似ていることから、小売店などでは「万願寺とうがらし」として流通しました。
このことから、一般的な分類名である「万願寺とうがらし」と、この地域で生まれた固有の品種名である「万願寺とうがらし」を区別するため、「万願寺甘とう」と新たに名付けられました。

■学校給食で万願寺甘とうを子どもたちに
市内で万願寺甘とうを栽培する「福知山万願寺甘とう部会」では、毎年、学校給食に市内で収穫した万願寺甘とうを提供しています。
子どもたちに地元の特産品を知ってほしいと始まったこの取り組みは、今年で5年目。過去には、豚肉や玉ねぎなどと炒めたものや、万願寺甘とう1本を丸ごと揚げた天ぷらなどのメニューが給食時間を彩りました。
今年も、7月と9月に生産者の思いがこもった万願寺甘とうが市内の小中学校に届けられます。

◆Interview
○万願寺甘とうは、とにかく“食べる人のことを考えて”つくられた野菜。
一般的な野菜は、種を植えた後、育てる過程でより美味しくなるように工夫を凝らします。しかし、万願寺甘とうは、辛味という短所を消すために種から品種改良された野菜です。
品種改良によって形が悪くなったり、収穫量が減ったりと、農家からすると難しいこともあります。それでも、辛いとうがらし、いわゆる“当たり”がないからこそ、親が子どもに安心して食べさせられる。万願寺甘とうは、売ることだけではなく、食べる人のことを思って進化した優しい野菜なんです。
万願寺甘とうのブランドは一朝一夕で築き上げたものではありません。これまでの生産者がファンを増やしてくれたおかげで、私たちの世代が万願寺甘とうを売って生活できているのです。
だからこそ、私たちも次の世代の生産者のために、ファンを増やしていかなければならないと思っています。学校給食に提供しているのもその取り組みの一つ。食べる人のことを思った優しい野菜で、10年20年先の生産者の生活をつくっている、そんな仕事ができていることが、私の喜びです。

福知山万願寺甘とう部会 部会長
北山慶成(きたやまよしなり)さん

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