■ハマヒルガオ(ヒルガオ科)
初夏の砂浜はハマヒルガオ(浜昼顔)の薄いピンク色で染まります。小さなビーチパラソルが無数に並んでいるようなハマヒルガオの花。砂浜を歩いていると、懐かしい気持ちが湧いてきます。かつて日本中を沸かしたラジオドラマ「君の名は」の主題歌に登場したハマヒルガオですが、改めて見ると花は花で、葉の形も同じで、すっきりと分かりやすい野草です。昼には閉じる朝顔に対し、日中も砂浜で咲きつづけることから、ハマヒルガオという名前も納得の分かりやすさです。ちなみに朝顔がつる性であるのに対して、ハマヒルガオは匍匐(ほふく)性と区別されます。砂の下を潜ったり上に顔を出したりしながら、大群落をつくりますが、その茎は丸くなめらかで無毛、地下部分は白く、葉は濃緑色でやや厚く光沢があり、長さは2~4cm、幅3~5cmの腎円形で、基部は深い心形となっています。花は葉腋から長い花柄を出し、先端に1個の薄紅色の合弁花をつけます。花冠(かかん)は直径4~5cmで、蕾(つぼみ)は朝顔と同じようにねじれ、開花時間はアサガオより長く、日中咲き続け、夕方にしぼみます。果実は蒴果(さくか)(種が鞘に入っている)で丸く、種は黒熟。自生は世界各国の砂浜とのことですが、熱帯地方には葉が軍配の形をしたグンバイヒルガオが多く、日本でも四国、九州あたりで見られるようで、世界的にはグンバイヒルガオの方が優勢とのことです。最近は日本海側でもハマヒルガオの自生地が減少しているそうで、一つは外来植物の影響、一つは砂浜競技に利用されるため、砂浜植物が一掃される事態に。現在、諸寄の雪の白浜海岸や居組海岸で群生が見られます。やはり初夏の浜辺は、いつまでもハマヒルガオに覆われていてほしいと思います。
文・写真 中澤博子さん
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