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神河町史「自然・地理編」地質調査(その2)

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兵庫県神河町

■神河町には鉱山がたくさんあった
神河町史調査員(地質)橋元正彦

神河町では現在、越知谷鉱山(越知)と福山鉱山(福本)の2つのろう石鉱山が操業しています。どちらも明治の初めに開発された鉱山です。これ以外に、かつては銅・鉛・亜鉛などを産出した金属鉱山が数多くありました。今回の調査で、川上に7つ、大川原・猪篠・新田に1つずつの金属鉱山跡が確認できました。

1.平石(ひらいし)鉱山
平石鉱山(川上)は平石山の中腹にあり、スギ林の中の山道を登っていくと、斜面の上に石垣が現れます。石垣は二段になっていて、下段は長さが80m近くあります。山の中に残る長大な石垣は、まさに産業遺産です。石垣に沿って道がつくられ、坑口(こうぐち)から鉱石をソリに乗せて選鉱所へ運び、不要な石はトロッコで隣の谷へ運んで落としていました。坑口から急な斜面を登っていくと、山神社が祭られていたところがあり、そこに手水鉢(ちょうずばち)が残っています。手水鉢には「大正七年(1918)五月一日」の銘があることから、平石鉱山は大正期には稼行(かこう)していたと考えられます。
坑口の近くでは、いろいろな鉱物を見つけることができます。黄銅鉱(おうどうこう)は金色に光り、一部が虹色にさびています。閃亜鉛鉱(せんあえんこう)は黒色で、強く光を反射します。電気石は、針のように細長い結晶が放射状に集まっています。孔雀石(くじゃくいし)は鮮やかな緑色です。鉱物を調べると、この鉱山がどのような金属を産出していたかがわかっていきます。

2.琢美(たくみ)鉱山・丈山(じょうやま)鉱山・福畑(ふくはた)鉱山
琢美鉱山(川上)は、粘土を丸めた「よせき」を焼いて砒素(ひそ)を採っていました。丈山鉱山(川上)は、道も消えた山の上に今も坑口がぽっかりと開いています。福畑鉱山(新田)のズリ(捨て石場)では、孔雀石やブロシャン銅鉱、青鉛鉱(せいえんこう)などの銅や鉛が水や大気と反応してできた鉱物が見られます。
かつて鉱山では、地元の人が多く働いていました。子どもたちは遠足で鉱山を訪れ、大きな建物や機械に目を見張り、親や近所の人たちの働く姿に接しました。
鉱山は、産出した金属によって日本の近代化を支え、地元の人たちの生活基盤となっていたのです。

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