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自治体の皆さまへ

【特集】あなたが、あなたであるために(3)

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北海道上富良野町

〔Voice 専門家の声〕
●楽しい、好きなことを重ね、安心できるつながりのもとで支えることが大切。
教育振興課教育支援担当
松田 剛(まつだたけし)主幹
町内の小中学校でスクールカウンセラーを務める、松田剛主幹。子どもと親とその家族の専門家として、不登校や学校に行きにくくなっている子どもたちとそのご家族の相談にのってきました。
「家族以外の人とボードゲームなどをしながらおしゃべりする、あるいは一人で読書したり絵を描いたり…。町教育支援センター「Mina(ミナ)・Mina(ミナ)」に何度も来てくれることでスタッフとも仲良くなって…。中学生であれば進路のことは心配ですが、そんな人間関係をベースに次につながるようにかかわっていきます。スタッフと良い時間を過ごすことで元気になってもらえるようなサポートをしています。
まず、将来の“目標”を立て、何をするかを一緒に考えて、ちゃんと行動するように促す…。こんな発想で考える大人がほとんどでしょう。しかし、これではうまくいかないです。不登校状態にある人のなかで、学校に行こうとすると身体が固まってしまうと言う人がいます(頭と身体の混乱期:図1参照)。行かなきゃいけないのは分かっているのに、でも、行こうとするとなぜか身体が動かない…。さまざまな要因が複雑に入り組んで、そのような状態にならざるを得ない…という風にとらえることもできます。このような人たちは、決して怠けているわけではありません。『あ~明日、仕事行くの面倒くさいな~』と思った時、あなたは“怠けて”仕事を休むことができますか? 3ヵ月、4ヵ月、年単位でさぼることができますか? そんなことをしたら、社会から取り残されるような、とてつもない不安を感じるはずです。不登校状態で困っている人に、目標を立て、そこに向かって…というのはむしろ逆効果。不安をあおることで、ますます動けなくなります。そうではなく、安心できる環境で、今できそうなことをやりながら、とりあえず『これでいいんだ』という経験を積む(МITインパクト、養生の時期)。ちょっと元気になって定着したら、タイミングを図りながらほんの少し次のことに触れていくのです(少し元気な時期、頭と身体の調整期)。支援者側として将来のことは頭にありますが、そこを前面に出さずに『とりあえず、これとこれができるけど、どうしようか~』という軽い感じで“一歩後ろからリード”していくように進めています」

現在、不登校は珍しい話では無くなっています。不登校当事者ではない第三者として、何かできることはあるかと聞くと「特段何かするということはありません」と松田主幹は話します。
「子どもができることをやっているのであればそれでいい、というふうに見ててほしいと思います。子どもだって自分自身でも分からない事情があり、そのなかで一歩踏み出して外に出ているわけなので、平日、子どもが町で普通に過ごしてほしいと思います。不登校は昔、珍しいことだったかもしれません。でも今日は違います。たとえ不登校状態になったとしても、ほとんどの人が元気になり、社会で頑張っています。学校に行かなくてよいと言っているわけでなく、行けるものだったら行けばいいんだけれどそうならざるを得ない状況があるっていうことを、頭の片隅に置いて、普通に接してほしいです」

教育振興課教育支援担当
松田(まつだ) 剛(たけし)主幹
臨床心理士。平成18年より町の発達支援センター、こども園の療育関係の業務に携わってきたことをきっかけに、平成24年より町内の小中学校のスクールカウンセラーとして勤務。平成31年からは町の職員に。広報紙の「家庭教育コーナー」には年1回登場し、気さくな文章が好評です。

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