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感動の場・点

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北海道倶知安町

■『森の入り口の白い樹』1988年小川原脩画
白い樹皮の木が2本、画面の左右にどっしりと構えた様子はあたかも「門」です。その間に1羽の鳥が羽ばたいています。黄色いくちばしにふくよかな体の鳥は、大きく尾羽根を広げ着地しようとしているのでしょうか。橙色(だいだいいろ)から赤茶へと濃くなる色彩が、その奥に広がる空間の深さ、濃密さを彷彿(ほうふつ)とさせます。
この頃、小川原脩は1986年にインド・ウッタルプラデシュを旅した際に取材した風物を繰り返し描いていました。作品に登場するものはインドの豊かな農作物をたっぷり詰め込んだ麻袋、素焼きのつぼ、平たい家屋の街並み、そして羽ばたく鳥。さまざまに組み合わせが試され、多くの作品が生み出されました。
88年、30周年を迎えた麓彩会展にもそのような作品を出品しています。その中に、本作も含まれていました。この作品にはインドの風物は現れていませんが、同じように羽ばたく鳥の姿が共通しています。旅先で印象を得た鳥のモチーフと葉を落とした白い樹が織りなす、倶知安の冬のはじまりを叙情的にうたった一点となっています。

文:沼田絵美(小川原脩記念美術館副館長)

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