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自治体の皆さまへ

小さな本屋のひそひそ話 第7回

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北海道大樹町

■新刊を売ることにこだわりたい
何年か前に、お笑い芸人でエッセイなどの著作もある若林正恭さんがある番組で「読み終わった本は捨てている」と言ったことがちょっとした話題になりました。「古本屋で売っても作家に印税が入らないから」というのが若林さんなりの理由でした。もちろん「捨てるぐらいなら誰かに回した方がいい」「古本屋がきっかけで好きな作家に出会える人もたくさんいるのに」という反対派も見受けられたのですが、私は概ね若林さんの意見に同調していて、自分の本屋で古書を売らないのはそれが理由です。
全国を見渡してみると、古本の移動書店(および出張販売)はそこそこ見つかるのですが、新刊の移動販売をしているところはあまり多くありません。実店舗をもつ新刊書店が、店にある在庫を携えて定期的に出張販売をするというケースは聞くのですが、新刊は古書に比べて粗利が極端に低く、くわえて燃料費や出店料など諸経費を鑑みると店の利益はその労力に見合わないというのが大きな理由だと思います。
ただ、私の場合は利益を得ることを第一に望んで移動本屋をしているわけではありません。読書環境が全国的にみても恵まれていない(これはデータでも実証されています)北海道で、良質な本に出会うきっかけ作りをしたいという思いが根本にあるので、利潤を追求してしまうとおそらく活動にブレが生じます。と、いうことも踏まえ、曲がりなりにも出版業界に身をおいている以上は、古本を売ることで自分だけが潤うのではなく、新刊を売ることで少しでも出版業界全体に利益が循環していくようにしたいというポリシーがあります。だから、弊店では現行発売されている本は必ず定価で販売し、絶版(品切)で手に入らないというものだけを古書として入手し、多少の上乗せをしてお出ししています。とはいえ、弊店にある古書は1回の出店につき1冊あるかないかという割合です。
もちろん、私も若い頃はブックオフに大いにお世話になりましたし、新刊書店にはない古書店の魅力というものもあり、実家に帰れば必ず古書の街である神保町に足を運びます。ですので古本屋が悪いと言いたいのでは決してないことを申し添えて今回の結びとし、古書の魅力については次号お話ししたいと思います。

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