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自治体の皆さまへ

小さな本屋のひそひそ話 第3回

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北海道大樹町

■選書のコンセプト
前号でもお伝えしたとおり「移動書店」という形態をとっている以上、一度に持っていける本の数はせいぜい百冊程度です。この限られた冊数を選書する際、私が特にこだわっているのは「普通の本屋さんでは見つけられない本を置く」ということです。「普通の本屋さん」という表現がそもそも適当なのか分かりませんが、雑誌やコミックス、小説の売れ筋ばかりが目立つ売場では見つけにくかったり、あるいはそもそも置かれてすらいない本、でも、確実に面白くて必ず誰かの手に取られる本…そういった本を選書しています。
最近特に好んで選書しているのは、ある生きものを一途に追い続けた方々のエッセイです。紋別市のアザラシ保護施設で働く岡崎雅子さんの『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』、幼い頃からキリンを愛し研究者にまでなった郡司芽久さんの『キリン解剖記』、そして『さかなクンの一魚一会』など「何かを大好きだ」という気持ちは生きる原動力になりますよね。もちろんお客様のニーズに応えるために業界全体の売れ筋や流行は把握して、その中でも弊店に入れたいと思うものはラインナップに加えます。最近だと、小説家の西加奈子さんが移住先のカナダで乳がんを患い、過酷ながらもかけがえのない日々を綴ったノンフィクション『くもをさがす』や朝の連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった牧野富太郎さんのエッセイがそれに該当します。
大事なのは、弊店のオリジナリティが店主(私)の独りよがりになりすぎないこと。おすすめしたい本はたくさんあってキリがありませんが、訪問先の客層を意識したり、店舗やイベント会場の雰囲気に合う本は何だろうといつもよく考えて出店に臨みます。お客様から頂く言葉で、「こんな素敵な本があるなんて知らなかった!」と「この本ちょうど読みたいと思っていたんだ!」は同じくらい嬉しいものです。今後も、素敵な本をたくさん紹介できるように精進します。

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〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

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