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自治体の皆さまへ

新春対談 十勝・帯広を楽しむ。(2)

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北海道帯広市

■起業家コミュニティが持つ力
市長:
ありがとうございます。TIPでも、革新者が十勝を絶賛してくださるので、メンバーはどんどんその気になっていく。ふと気付いたら、メンバーの数も想像以上に増えて、十勝に新しい「起業家コミュニティ」が生まれていたと感じています。あえて言えば、この10年間におけるTIPの最大の成果ではないかと思います。
山井:
TIPのメンバーには、創業者もいますが、2代目や3代目も含めて、皆さんが創業マインドでつながっている感じがあります。
齊藤:
本当にそうですね。TIPの直接的な成果は、そこから生まれた新事業の構想数や新会社の設立数ではありますが、実はもっと重要なのは、300人ほどの挑戦的な人材が、TIPを通じて可視化され、つながったことだと思います。TIPの同窓意識は意外に強くて、北の屋台で飲んでいるときに「えっ、TIP卒業生なの?」と言って互いに一緒に飲み出すといった光景に出会うこともあり、嬉しくなります。
市長:
それは嬉しい話ですね。あっという間の10年でした。最初は、十勝の人々に、起業への興味を持って欲しくて始めたことだったのですが、今では十勝以外でもこのプログラムが動いていますし、正直ここまでの広がりは、予想していませんでした。
齊藤:
ありがとうございます。十勝がイノベーションプログラムの創業の地となってくれたからこそ、全国の他の地域にも拡大することができました。
ところで、コミュニティを育てると言えば、スノーピークがすごいと思います。スノーピークはプロダクト・ブランド※2であるとともにブランド・コミュニティ※3にもなっています。山井さん、秘訣を教えていただけないでしょうか。
山井:
かなりシンプルに言ってしまうと「好きなこと、楽しいことだけをやる」でしょうか。
スノーピークは、最初からコミュニティを作ろうと思っていた訳ではなく、メーカーとキャンパーの立場でも、同じキャンパー同士、一緒にキャンプしたいね、とか、日本のキャンプ文化をもっと高めていきたいね、といった視点で楽しく仕事をしてきたので、結果的に、ここまでのコミュニティが生まれたのではないかと思います。ビジネスの世界では、そういう関係は成立しにくいと思うのですが、TIPには、スノーピークと同じような雰囲気が流れているように思います。
齊藤:
そうですね。TIPの参加者の皆さんは苦しみながらも互いに刺激し合い、楽しんでいますね。事業創造の現場なのに、なぜか笑顔が多いのもTIPの特色のような気がします。
山井:
ええ。楽しもうというのがキーワードですよね。
市長:
今のお二人の話を聞いて思ったのですが、TIPのメンバーは「仕事は楽しむもの」とか「好きなことを仕事にする」といった考え方を、DNAとして革新者の皆さんから植え付けてもらったのでしょうね。

■仕事を楽しむ
市長:
お二人こそ、まさに楽しんで仕事をされているようにお見受けするのですが、仕事を楽しむコツについてお話いただけますか。
齊藤:
仕事を楽しむか…、楽しめていますかね、自分?
山井:
楽しんでいらっしゃると思いますよ。しかも、齊藤さんにしかできないことをされているし、十勝以外でも、地方に行かれているじゃないですか。
齊藤:
そっか、ありがとうございます。自分にしかできない仕事だなんて言われると嬉しいですね。それと、確かに僕は、旅をするように仕事ができるスタイルを探求してきました。いろいろな地域に顧客や仲間を作りたい、そして旅の合間には、太田和彦さんの『居酒屋百名山』をチェックしておき、老舗の居酒屋で渋く一人酒を飲むのが数少ない趣味なんです(笑)。
山井:
僕も同じかもしれません。今ではデジタル技術もあるので、地方に居たとしても、旅の途中でも、仕事はできますよね。本社がある新潟県三条市に次いで、十勝には仲間が多く居ますしね。
市長:
そういえば、山井さんは旅に出ている時間が大変長いという話を聞きました。その間、会社からは探されないそうですが、本当でしょうか。今回も対談を行うにあたって、山井さんに連絡が取れないかもしれないと、心配していたことを思い出しました(笑)。
山井:
以前、齊藤さんの連載コラムの中で「探さないでください。旅に出ます。」とSNSに書き残し、1~2週間ほど不在にする社長がいます、と書いてくださったことがあります。お墨付きをもらったという感じで、それ以降、随分と旅に出やすくなりました。僕にとっては恩人の一人です(笑)。
コラムの続きには「僕が会社でずっと仕事をしていても、スノーピークは成長していなかったでしょう。」という言葉も載せていただきました。
齊藤:
そうでしたね。山井さんが社内でPDCAサイクル※4を回してばかりいたら、スノーピークはスノーピークでなくなるだろう、なんて生意気なことを書きました。でもその記事には、1万「いいね」も集まりました(笑)。
ところで、TIPがここまで盛り上がり、自分にしかできない仕事だなんて言ってもらえると、その反面、それにしがみつく自分が見えるんです。地域に残していくためには、誰かに譲り、託すことも必要ですが、自分から何も無くなってしまう寂しさもあります。この寂しさから逃れるためには、自分に次の夢が必要で、次の夢があれば今やっていることを手放すことができるのだろうと思っています。
市長:
なるほど。これは自分にしかできないことだよな、と思った瞬間、それが自分のよりどころにもなって、手放せなくなることがありますが、これを乗り越えていくためには「楽しむ」とか「わくわくする」気持ちが大切なんだなということが、お二人に共通しているなと思いました。
ここがゴールだとか、ここに最後まで居るんだ、と考えてしまうと、いろいろと窮屈になって、誰にも譲れなくなってしまうのかもしれませんね。

※2 プロダクト・ブランド
企業が製造・販売する商品やサービス自体のブランド。
※3 ブランド・コミュニティ
特定のブランドや製品に共感し、関心を寄せる人々が集まって形成される社会的なグループ。
※4 PDCAサイクル
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すマネジメント手法。

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