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地下の研究現場から 第38回-岩石の中をどれくらい電気は流れるか

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北海道幌延町

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
幌延深地層研究センター

モグ太くん:私たちの行っている研究について、広くご理解いただくために幌延町広報誌「ほろのべの窓」の誌面をお借りして町民の皆さまをはじめ、ご愛読者さまに研究内容についてご紹介させていただきます。

本連載の第12回(2021年6月号)と第26回(2022年8月号)では、幌延深地層研究センターで実施している岩盤の中を調査する方法について、直接見ることのできない岩盤の中を、地震の波や電気を流して調べる方法を紹介しました。電気を流しやすいものとして思いつくのは、水や金属で、岩石が電気を通すというイメージはあまりないかと思いますので、今回は岩石がどれくらい電気を流すかを紹介します。
岩石を顕微鏡などで観察すると、鉱物の粒子などの固体の部分と、粒子などの間に隙間が存在します。この隙間には地下水が入っていて、岩石の中を電気が流れるときは、この隙間に含まれる地下水の中を電気が流れます。このため、岩石の電気の流れやすさを測定することで岩石にどれくらい地下水が含まれているのかを推定することができます。そこで、岩石に含まれる地下水の量と電気の流れやすさ(比抵抗)の関係を調べるために、深度350mで採取した岩石の隙間を地下水で満たした状態から、乾燥させながら比抵抗を測定しました(図1)。図2は測定結果で、横軸は岩石中の隙間がどの程度地下水で満たされているかを示す飽和度を、縦軸は比抵抗を表しています。電気が流れやすいほど、比抵抗の値は小さくなります。岩石中の隙間が地下水で満たされている(飽和度100%)では、比抵抗の値は4Ω・m程度ですが、乾燥して飽和度が下がると電気が流れにくくなり比抵抗の値が大きくなるのが分かります。岩石の比抵抗は、一般に飽和度が100%の状態で100~1,000Ω・m程度の場合が多いですが、幌延の岩石は深度350mでも隙間の割合が約40%と高く、含まれる地下水も塩濃度が高く電気を流しやすいため、数Ω・m程度と電気が流れやすい(比抵抗の値が小さい)岩石と言えます。今回の試験では、隙間の半分程度が地下水で満たされている状態(飽和度50%程度)までの試験でしたが、ほぼ完全に乾燥させた場合には比抵抗の値は1万~10万Ω・mにもなります。なお、金属の比抵抗は1億分の1~1千万分の1Ω・mですので、幌延の岩石(数Ω・m程度)は電気が流れやすいと言っても、金属と比べると、非常にわずかしか流れませんが、このわずかな電気の流れを利用して岩石の中を調べることができます。

図1,2は本紙をご覧ください。

広報調査等交付金事業

お問い合わせ先:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
幌延深地層研究センター…【電話・告知端末機】5-2022【HP】https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/
ゆめ地創館…【電話・告知端末機】5-2772【HP】https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/yumechisoukan/index.html

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