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うらうす建物紹介(11) 太田勉強堂

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北海道浦臼町

構造・規模:
1階 石造(札幌軟石)
2階 木骨石造
竣工年:昭和初期

■浦臼の子どもたちに、なくてはならない文房具屋さん
太田勉強堂は昭和初期に現在の位置から国道を挟んだ向かい側に建っていましたが、昭和20年代に現在の位置で建て替えられました。写真(1)(本紙参照)は建て替え後間もない昭和20年頃の様子です。
現在は化粧品や雑貨の販売が主ですが、筆者が子どもの頃は店の名前通り、もっぱら文房具販売を行っていました。浦臼小学校と浦臼中学校に近いことや、統合前でも小中学生あわせて500人以上の児童・生徒がいましたから、浦臼の子どもたちにとってはなくてはならない文房具店でした。ちなみに当時は町立浦臼高校もありました。
後年、南側に店舗、西側(裏側)に住居部分を木造で増築し、現在は化粧品や雑貨の販売を行っています。創建時の石造部分はほぼ当初の姿のままです。石造洋風の外観ですが、2階の内部が和室になっている点は尾花商店と同じです。

■石造+木骨石造+鉄筋コンクリート造+木造
軟石を用いた店舗建築は小樽市などでも見られますが、その多くは木造骨組みの外側に軟石を積んだ「木骨石造」と呼ばれる構造です。一方、太田勉強堂は1階が厚めの札幌軟石を積んだ石造で、2階が木骨石造です。上下階で構造が違っている珍しい造りです。また、2階道路側の軟石外壁面の直下は店舗空間なので、そこに石造壁を配置する訳にはいかないため、2階の軟石外壁は鉄筋コンクリート造のフレームで支えています。
したがってこの建物の構造形式を丁寧に言うと、石造+木骨石造+鉄筋コンクリート造で、2階床と屋根は木造の混構造という少々複雑な構造です。
約80年経った現在でも建物にゆがみなどは全く見られず、創建当初にきちんと設計・施工された建物であることと、札幌軟石が耐久性に優れていることが分かります。

■石造外壁の表情
2階の道路側の4つの縦長の窓(写真(2))(本紙参照)には引違いのアルミサッシが嵌められていますが、写真(1)を見ると当初は洋風の上げ下げ窓であったことが分かります。尾花商店と同様な窓であったと思われます。
窓の上部には飾り模様のついたまぐさ※があり、窓上部の重量を支えています。まぐさの上には傾斜した石が並ぶフラットアーチが載っていて、意匠的な軟石の割付けがなされています。
外壁に使用されている札幌軟石の表面を見ると、写真(3)(本紙参照)のように、ノミのようなもので細かく窪みを付けた「小叩き仕上げ」です。大正期に建てられた尾花商店の蔵は、ツルハシを使って軟石を手で切り出していた時代の「ツル目仕上げ」でしたが、昭和期に建てられた太田勉強堂では、機械で切り出した軟石の平滑面に意匠的に凹凸をつけるために小叩き仕上げとしたのかもしれません。
※まぐさ…窓上部の壁の重量を支えるために、窓の上辺に渡す横架材

札幌市立大学で教員してます西川忠です。これまで、主に私の研究室の三角颯音が記事を書いていましたが、太田勉強堂は私が子ども頃に大変お世話になった思い出深い建物なので、今回は私が筆をとらせていただきました。
私が子どもの頃は、通学経路でもあったので、友達と一緒に用がなくても店にしょっちゅう出入りしていた覚えがあります。
石造の部分はその頃からほとんど変わっていないので、この建物を見ると小学生の頃を思い出します。本文にも書きましたが、札幌軟石を使った建物はたいへんしっかりしているので、町の顔として在り続けてほしいものです。

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