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地域で支え合えるまちづくりへ ~認知症に関する講演会を開催しました~(1)

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北海道音更町

町は、認知症の人が尊厳を保ちながら希望を持って暮らすことができる地域共生社会の実現に向けて、認知症に関する情報を発信しています。長谷川診療所の長谷川洋院長による認知症講演会を開催しましたので、講演の一部を紹介します。

■講演会開催概要
講演会は、8月27日(日)に文化センターで次のとおり開催し、330人が参加しました。
テーマ:医師として、認知症当事者の家族として思うこと~認知症専門医の父、長谷川和夫が認知症になって~
講師:長谷川洋さん

◇講師紹介
長谷川診療所院長。1970年東京都生まれ。聖マリアンナ医科大学東横病院精神科主任医長を経て、2006年に長谷川診療所を開院。地域に根差した精神科医として、さまざまな精神疾患の治療とケアに従事。聖マリアンナ医科大学非常勤講師、川崎市精神科医会理事、神奈川県精神神経科診療所協会副会長などを務める。認知症医療の第一人者、長谷川和夫さんの長男。出版やテレビ出演、全国各地の講演会などで活躍中。

■講演内容について
◇認知症専門医でも認知症になる
父は、認知症医療の研究を50年間行っていましたが、その専門医でも認知症になったということは、「誰でも認知症になる」ということを証明できたのではないかと思っています。
認知症になる前後で、何かが変わってしまうわけではありません。私も、父がいつから認知症になったのか、はっきり分かりませんでした。認知症になる前後で変わることはないのです。
また、認知症の研究をしてきた父でも、認知症にならなければ分からなかったことがあったようです。そのため、私たちは認知症の人から教えていただかなければ分からないことがたくさんあるのではないかと思っています。まずは「ご本人に聞くこと」が大切です。

◇長谷川式認知症スケール誕生のきっかけ
父は、認知症医療の第一人者として知られていますが、元々はてんかんの治療や研究をしていました。昭和30年代にアメリカ留学から帰った後、勤め先の教授から「痴呆症(当時の名称)の診断が1日1日変わってはいけないため、診断のための物差しを作れないか」と相談を受けたことがきっかけとなり、診断スケールを作りました。
開発当初は、長谷川式認知症スケールではなく別の名称で父は考えていたようですが、教授から「長谷川式」でいいのではないかと言われ、「長谷川式認知症スケール」が誕生しました。その後に所属した聖マリアンナ医科大学病院で改訂版を作成し、現在も使われているものとなっています。

◇父との思い出
10年ほど前、現在の診療所で父と週一回外来で診察をすることになり、一緒に仕事をできたことは非常に良い経験になったと思っています。父からは、患者さんの「辛さに共感すること、一緒に困ること」の大切さを学びました。
また、父の診察は長く、患者さんと一緒に歌を歌ったり、一緒に笑い合ったりと一人一人に時間をかけ向き合っていたように感じます。私も同じ気持ちがあってもなかなか診察に時間が取れていませんが、ただその中でも、心掛けとしてお辞儀やお礼、あいさつといった「態度」で示すということは、限られた時間でできる工夫なのではないかと思って意識的に行うようにしています。
父と一緒に講演を行った時のことですが、参加者から、目を閉じて寝ている時間が多い母について質問がありました。その時に、私は生活リズムのことやデイサービスの話をしましたが、父は「目を閉じて考え事をされているんですよ。そのままでいいんですよ」と答えたことが印象に残っています。現状を否定せず、何かを変えようと思い過ぎないということも大事なのだと感じました。

◇家族が介護するということ
家族の介護は、非常に多くの時間を要し、また仕事と違って報酬が発生しないため、達成感や安堵感が生じにくいです。父が言っていた、「パーソンセンタードケア」という認知症の人を中心にしたケアは大事ではありますが、その中で家族もケアを頑張ろうとしていくとだんだん疲れてきてしまうので、完璧な介護を目指さないようにすることも必要だと思っています。
家族は介護のプロではないので、介護福祉サービスを利用し、休めるような時間や場所、好きなことをやっていただくということが必要ではないかと思います。また、介護福祉サービスを利用することで、「失敗体験を減らせる、失敗の経験を共有しない」ということは、長年築き上げた良い関係を維持することにつながります。介護者が健康でなければ、本人のサポートはできません。困り事は、独りで抱え込まず、介護に関する相談窓口があるので活用していただきたいと思います。
そして、「家族にしか」できないこともあります。例えば、昔の話を写真を見て楽しかったことを話したり思い返したりすることは、家族にしかできないことだと思います。父は、「昔楽しかったことや昔の良かったことを思い出してもらうというのは、今楽しい体験をしていることと同じなんじゃないか」と言っていました。ご本人に、楽しい気持ちになってもらえるように引き出すということは、家族にしかできない大切なことだと思います。

◇きずなを大切に
「みんなそれぞれにたくさんのきずなを持って今の自分になっている。分からない同士だからお互い尊重して生きていかなきゃいけない」と、父が言っていました。認知症の人には特別な配慮をするということではなく、長年日本を支えてきた人たちであるという視点で、敬う気持ちを持つことが大事であり、過ごしやすい社会にもつながっていくと思っています。

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