◆開館30周年!神田日勝記念美術館小林潤館長にインタビュー(続き)
◇音声ガイドも大きな話題となりましたよね。来館者数が飛躍的に増加し、翌年の令和3年には60万人を迎えました。
60万人目は道外からのご夫婦で、とても驚き喜んでおられました。節目の出来事は通過点とは思いますが、これまでの歴代館長・町理事者・友の会の皆さんのご支援があってこの節目があると感謝しています。ここまでは諸先輩の頑張りによるものと受けとめていますが、これからは後に続くものの頑張りによるものだと捉え、自らを鼓舞しているところです。
◇今後に向けての展望をお聞かせください。
30周年を過ぎて、これまでのさまざまな展覧会を振り返りながら、新たな方向性を模索しています。特に日勝作品の収集・保存・修復・展示を中核に捉えながら、美術館として町内や十勝内外に美術のすそ野を広げていく活動をしていかなければと感じています。
◇美術のすそ野を広げる?
はい。今年実施した「第2回躍動する十勝の美術作家展」のように、当館が十勝の美術作家さん相互に交流し合える場となればと思っています。
◇新たなステージに入ったということですね。新しい試みといえば今年行われた「未完の馬」のいる風景プロジェクトも斬新な取り組みだったように思います。
このプロジェクトは、美術館友の会の方の「【未完の馬】を美術館から外に飛び出させてみたらどうだろう」という声から始まりました。黄金色の麦稈ロールが点在する十勝の秋の風景に「未完の馬」がいたらどうなるだろうと。
さらにはこの光景を写真で残し全国の北海道ファンにも届けたいとの発案があり、地元の高校生・若手の農業者・鹿追光画会・主婦の方・ピュアモルトクラブなど老若男女がそれぞれの得意分野を生かし協働してくださいました。
◇今年の「鹿追町ふるさと産業まつり」にも展示されていましたよね。会場に麦稈ロールを積み上げ「未完の馬」とともに親子で遊べるスペースには多くの人が集まっていた印象があります。
会場内には「未完の馬」が印刷された風船をもった子どもたちが楽しそうに駆けまわっていました。まさに「未完の馬」が外に飛び出した瞬間ですね。
◇「躍動する十勝の美術作家展」も「未完の馬」のいる風景プロジェクトも、まさに美術と人をつなぐ事業ですよね。
それこそが町の美術館だからこそできることだと考えています。当館は日勝の作品を大切にし、多くの町民の皆さんに鑑賞いただけるよう工夫をしていて、1年に2回・3回と展示作品を替えています。さらにさまざまな作家の作品展示もしているので、これからもお時間があるときは足をお運びください。きっと皆さんの心に残る時間を過ごしていただけるよう準備をしてお待ちしています。
●神田日勝記念美術館 開館30周年記念事業
・よみがえる全十勝美術展…6月7日-8月6日
・神田日勝×岡田敦 幻の馬…8月11日-10月28日
・絵画感想文コンクール優秀作品展…10月3日-10月10日
・第2回躍動する十勝の美術作家展…11月1日-12月10日
・十勝水彩作家展…11月8日-12月10日
●「未完の馬」のいる風景プロジェクト
開館30周年記念事業として、日勝代表作品の一つ「未完の馬」を形取った合板を麦わらのロールに取り付け、畑に並べるプロジェクト。その風景を撮影し、「馬耕忌」や「鹿追町ふるさと産業まつり」で展示した。
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