特集「成長を、止めない。」 サッカー指導者 廣山望さん(3)

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◇指導者を目指すきっかけは現役時代に取得したC級コーチライセンス
海外から帰国して東京ヴェルディに選手として所属していた時、チームメイトがC級コーチライセンスを取りに行っていたのを見て、僕もなんとなく取りに行ったことが、指導者を目指すことになったきっかけです。当時はまだ現役選手でしたし、自分が指導者に向いているとも思っていなかったのですが、やるからには全力でやろうと取り組みました。
その後、ザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)に所属していた時にB級コーチライセンスを取りに行き、その時の講師だった布啓一郎さんに指導者としての話を聞き「指導者ってすごいんだな」と肌で感じたことをよく覚えています。
その後、ザスパ草津を退団してアメリカへ移籍するとなった時に、布さんから「現役をやめたら指導者にならないか」と言ってもらったことで、指導者の道を強く意識するようになりました。
アメリカへ渡り、現役最後に所属したチームが独立リーグに所属する「リッチモンド・キッカーズ」というチームでした。そのチームは育成に重点をおいていて、10面以上のグラウンドを保有し、男女あわせて1千人を超える子ども達が通っていました。トップチームの選手は、午前中は自分達の練習をして、午後は所属する子ども達の監督やコーチをすることが、あたり前に行われているような環境でした。
アメリカでは、どの職業でも「プロ」であることが求められます。大卒1年目の選手でも、子ども達を指導する時は、その道のプロフェッショナルかと思うくらい、教えることが上手でしたね。
日本でライセンスを取得してからアメリカのそういった育成環境を見られたことは、指導者としての土台を築くうえで、良い2年間だったと思います。

◇現在(いま)がサッカー人生の集大成
ジェフで残留争いをしていた時に最終節で逆転勝ちして残留したことや、国立競技場で4万人の観客を前にゴールを決めたこと、南米のチームに所属していた時に優勝したシーズンでほぼフル出場できたこと、引退試合を家族が見に来てくれたこと、選手時代の思い出はたくさんあります。
しかし、選手時代から指導者になった現在まで、全てが繋がっていて現在(いま)が「集大成」だと思って続けてきています。選手時代の「忘れられない試合」を経験してきたことが、現在(いま)の指導者の人生に活きているんだと思います。
忘れられない試合をあげればキリがないですが、次に繋がるエネルギーになったと思えた試合は、コーチとして昨年の11月に参加した「U-17ワールドカップ」です。指導者となった今でも、選手時代を上回る思いができて、新しい刺激がある舞台にいられることは、とてもありがたいですね。

◇よりよい指導者になりたい
今は代表チームに携わることが多いのですが、代表ではクラブチームとは異なり、限られた時間と環境の中で活動しなければなりません。短い期間に、何を落とし込んで、どうやって刺激を与えるか、選手の最大の成長に繋げるためには経験や工夫が必要です。U-17ワールドカップで一緒に指導した森山佳郎(よしろう)さんは、それがとても上手な方でした。経験に関しては、それを持っている方からしか教わることができないので、近くで勉強させてもらいましたね。
ただ、代表で指導していても、クラブで指導していても、よりよい指導者になりたいという強い想いは変わりません。

◇自分の成長が子ども達の成長に繋がる
指導する時に心がけている1番大事なことは「自分も成長したい」という気持ちを持ち続けることだと思っています。僕が成長することが、将来ワールドカップで日本が優勝することに繋がると信じて取り組んでいます。
僕にとってはそうやって取り組むことが1番楽しいですし、その気持ちが子ども達の成長に繋がっていると思っています。

◇好きだという気持ちを大事に
今、僕が指導している17歳くらいまでの選手や、昔アンダー世代で見ていてその後オリンピック代表などになった選手達に共通して言えることは、サッカーがどれだけ好きで、どれだけ上手くなりたいかという気持ちが強い子達が、上にあがっていけるということです。
上にあがればあがるほど、ストレスなどの自分に降りかかるマイナスの要素も大きくなりますが、それを栄養にして成長していける子達というのは、結局はサッカーが好きで、上手くなりたいという気持ちが強い子達なんです。
人に言われて練習をやらされるよりも、自分がやりたいことを率先してやってほしいですし、もっと上手くなりたい時には周囲の意見を聞いたり、各ステージで近くにいる先生にアドバイスをもらったりしながら続けてほしいですね。
また、サッカー好きは基本負けず嫌いだと思っています。僕も負けず嫌いで、今も勝負事は、例え高校生が相手でも真剣に戦います(笑)。最後は負けず嫌い同士の戦いになることもあるので、その気持ちも隠さず大事にしてほしいです。
好きだという気持ちと、好きなことをこれだけできているんだという自信を大事にして、思いっきり取り組んでほしいと思います。

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