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7.18水害から今年で70年目を迎えます

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和歌山県御坊市

今から70年前の昭和28年7月18日、和歌山県中部を中心に未曽有の大災害「7.18水害(昭和28年大水害)」が発生しました。御坊市でも死者・行方不明約220人の甚大な被害が出ました。
災害発生から70年が経過し、当時を知る人が少なくなってきている中、災害を経験した2人の方にお話を聞くことができました。

■田淵達男さん(上野口)
当時の事は今でも鮮明に覚えています。梅雨の末期で、1か月ほど雨が降り続いているような状況でしたが、昭和28年7月17日の上野口の天気はくもりで雨は降っておらず、川の水かさは少なく水もきれいでした。
次の日の朝、河川が増水してきているという話を聞きましたが、父親と「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫だろう」と高をくくっていました。そんな中、近所の人が「日高川の水位が上がってきているぞ!今すぐ逃げろ!」と叫んでいる声を聞き、家の前に出たところで、今の防災センター近くの堤防が決壊し、泥水があふれでてきたのです。
私は一心不乱に農業用の牛を引っ張って、前にあるとび山をかけあがり、熊野まで逃げて助かりました。
幸いにも家族や近所の方もみんな逃げることができたのは、勇気を出して声を出してくれた人がいたからだと思います。
発災後の生活については、次の日から2・3か月間、家に溜まった泥出しと家の片付けをする毎日でした。家で寝れる様になるまで、避難した熊野の家に泊まらせてもらったことや、地域のみんなで協力して片付けをしたことなど、人の優しさや温かさに助けられたことは忘れることはできません。
いざというときに協力ができたのは、日頃から地域での付き合いが盛んで、何かあったら助け合える関係性が出来ていたことが一番の要因だと思っています。
当時に比べると、日高川の堤防が高くなり、浚渫をして川床も低くなっているため、水害の発生確率は低くなっているかもしれません。しかし、自然に絶対ということはないので、昔の自分の様に「今回は大丈夫だろう」と思っていると、いつ痛い目にあうか分かりません。
実際、平成23年の台風12号による大雨災害(紀伊半島大水害)がありました。あの時は、水害への恐怖から早くから避難所に避難しました。幸いにも堤防が決壊することは無かったですが、自分の命は自分で守れるよう、早めの避難と事前準備を心がけています。

■橋本由枝さん(薗)
当時、中学生の私は、小さい妹や弟、近所の子どもたちの手を引いて昔の御坊中学校(今の市役所南側)に逃げました。それから中学校に船が来て、大人がくれたおにぎりを食べたことを覚えています。
水が引いて、家に帰れたのは次の日の夕方ごろでした。家の2階まで浸水していて、逃げる前に2階に移した麦がすべてダメになっていました。
そこから毎日家の泥を運ぶ作業をしました。一輪車に泥が入ったバケツを3つ載せて運びましたが、道も今みたいにきれいに舗装されていなかったので、重たくて、つらくて、やめたくなることもありました。それでも、地域住民同士が協力して、ゆっくりですが着実に元の生活に戻っていきました。
私の夫(故 橋本克彦さん)も水害の被害を受けた一人です。
夫は当時17歳で、天田の製材に勤めており、帰りに濁流に流されたそうです。旧天田橋の橋脚につかまって一夜を過ごし、何とか一命を取り留め、翌日水かさが減ったところで脱出しました。
夫は生前、「橋脚から流されていく人や家屋をただ見ていることしかできなくて悔しかった。自分も生きた心地がしなくて、母親に会いたいとずっと思っていた。」と話していました。そのとき助けることができなかった悔しさと自分の命が助かった感謝の気持ちを込めて、水害の次の年から毎年7月18日に、お酒を日高川に流して供養を続けてきました。
夫は亡くなるまで、67年間供養を続け、私も一緒にお参りさせてもらっていました。今は地域の方に協力してもらいながら毎年供養をしています。
このような大水害があったことを風化させてはならないという思いと、次の世代に伝え・繋いでいきたいという思いを持って、これからも夫が始めた供養を続けていきたいと思います。

■7.18 水害を教訓に–
お二人とも地域での助け合いや、普段から助け合える関係性を構築する重要性、このような災害があったということを風化させず、後世に伝えていきたいという思いを話されていました。
7.18水害は、昔の話だからといって私たちに無関係な話ではありません。近年増加している線状降水帯などの異常気象による水害がいつ発生してもおかしくない状況です。最近も6月2日の大雨によって県内でたくさんの被害が出ました。
次のページ(本紙P4)では、事前にできる備えや御坊市の取り組みを紹介します。

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