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特集 ありがとう、鞆渕中学校(3)

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和歌山県紀の川市

■地域と共に歩む学校
平成28年9月からの1年半を教頭として、令和2年からの3年間を校長として鞆渕小中学校に赴任した淡路先生。当初から鞆渕小中学校には特別な魅力を感じていたといいます。淡路宏明先生は「当時の全校児童生徒は23人。夏はホタルが乱舞し、冬は雪が降り積もる。自分が子どもだった頃を思い出させるような豊かな自然の中で、子どもと教職員、保護者が家族のような付き合いができることが、とても魅力的でした」と話します。
さらに、鞆渕地域ならではの行事も大きな魅力のひとつだったといいます。山村留学に興味がある子どもを募集し、鞆渕小中学校の子どもとともに学校で1泊2日のキャンプをする山村留学体験キャンプ、神輿(みこし)を担いで地域を練り歩く鞆淵八幡神社の秋祭り、子どもと保護者だけでなく、老人会や消防団など地域のみんなで楽しむ運動会、鞆渕の特産品である黒豆やちぢみほうれん草の栽培・収穫体験など、ここでしか体験できない行事がたくさんありました。「どの行事も地域の人たちが総出で参加・協力してくれることが印象的でした。学校が地域の人々が集まる場所となり一緒に関わることができたことは、他ではなかなか味わえない貴重な体験でした」と振り返ります。
鞆渕中学校は、令和5年3月末で全校生徒3人の内2人が卒業し、残る在校生1人も区域外通学を決めたことで、生徒数がゼロとなり、休校が決定。「地域の人々とともに歩んできた学校なので、地域全体で式典をしたい」と昨年の秋から保護者や地域の人たちと休校式の打ち合わせを重ねてきました。3月18日に開催された休校式には約170人が参加。「式を通して、懐かしい人たちが集まって再会する場となったことがよかったです」とほほ笑みます。
たくさんの地域の人々に愛されてきた鞆渕中学校。淡路先生は「休校になることは寂しいですが、一番大切なのは生徒の学校生活。きめ細やかな教育環境など、小規模校ならではの良さがたくさんあった一方で、生徒にとっては、集団の中で多様な考えに触れ、切磋琢磨することも重要です。生徒たちには鞆渕中学校で学んだことを誇りに思い、ここで自ら考え行動した多くの経験を生かして、新しいステージでも活躍して欲しいです」と力強いメッセージを送ってくれました。

■地域の未来のために
「鞆渕小学校は創立129年、鞆渕中学校は創立75年をもって休校することになりました。両校ともに歴史と伝統があり、本当に地域に愛されてきた学校でした」と話すのは鞆渕中学校の学校運営協議会会長で、村おこし実践団体アイラブともぶち代表の岩原晃さん。学校の運動会には地域全体で参加したり、しめ縄づくりや八十八(やとや)音頭の伝承を行うなど、長年にわたって、学校と地域が協力してさまざまな取り組みを行ってきました。
「地域の文化の源であり、地域の宝である学校が休校になることは大変寂しいが、地域の魅力がなくなるわけではない」と話す岩原さん。地域の魅力を発信するために昭和60年に結成したアイラブともぶちでは、夏にはホタル鑑賞や夏祭り、敬老会のイベントなど、多くのイベントを積極的に行っています。今回の休校式では、長年の感謝の気持ちを込めてフォルクローレの生演奏をBGMにバルーンリリースを企画。「これからも地域の拠点である学校を活用して、みんなが集まる拠点をつくっていけたら」と意気込みます。
学校と地域をつなぐ役割を果たしてきたアイラブともぶちのみなさん。「鞆渕に暮らす自分たちが活気ある日々を楽しみながら、子どもたちに鞆渕を誇りに思ってもらえるよう、そして自信をもって地元のことを話してもらえるよう、楽しく活力ある鞆渕を目指して活動を続けていきたい」と話してくれました。
鞆渕地域の人々の故郷への想いは、鞆渕をこよなく愛する人々の活動とともに、これからも受け継がれていくことでしょう

▽子どもたちにより良い教育環境を
紀の川市教育委員会 教育総務課 楠部昌洋課長

全国的に少子化が進む中、紀の川市内の小中学校でも児童・生徒数が減少しています。合併後の平成18年には市内で6,329人いた児童・生徒も令和4年には4,168人まで減少。今後も減少が進む見込みで、学校規模により教育環境に不均衡が生じるなど、教育上の大きな課題となっています。
市教育委員会では、子どもたちにとってより良い教育環境を整備するため、令和5年4月1日から学校再編推進の専門部署となる「学校再編推進室」を新たに設置し、学校の規模や配置の見直しに取り組んでいます。5年度は、紀の川市立学校適正規模適正配置基本計画をより具体化するための実施計画を策定し、保護者や住民への説明会などを進めていく予定です。
地域のみなさんの理解と協力を得ながら、子どもたちに負担が生じないように十分配慮し、教育環境の整備に真摯(しんし)に取り組んでいきます。

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