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(特集)アートは非日常 でも日常の延長にあるもの-1-

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埼玉県さいたま市

今年は3年に一度のさいたま国際芸術祭(以下、芸術祭)の開催年です。「わたしたち」をテーマに、10~12月に市内各所でさまざまな作品を展開します。ディレクターとして全体を統括するのが、現代アートチーム目[mé]。振付家・ダンサーで芸術祭に参加する近藤良平さんとともに、見どころや意気込みを語り合います。

≪PROFILE≫
〇さいたま国際芸術祭2023
参加アーティスト
近藤良平さん
振付家・ダンサー。ダンスカンパニー「コンドルズ」を主宰。テレビ番組の振り付けを手掛けるなど、親しみやすい人柄とダンスで幅広い層の支持を集める。2022年、彩の国さいたま芸術劇場(中央区上峰)の芸術監督に就任。

〇さいたま国際芸術祭2023
ディレクター
現代アートチーム
目[mé]
荒神さん 南川さん 増井さん
アーティストの荒神さん、ディレクターの南川さん、構想を形にするインストーラーの増井さんの3人を中心とする現代アートチーム。手法やジャンルにこだわらず、展示空間や観客を含めた状況、導線を重視する。

■アートの魅力は寛容さ
◇アートと言われると、とっつきにくい、どう見ていいのかわからないと感じる方も多いと思います。皆さんはアートをどういうものだと考えますか。
(近藤)
僕の場合は普段、あまりアートという言葉を使っていなくて。身体を使ってこんな動きをしたらどうなるんだろうと考えて振り付けや演出をし、結果的にそれがアートだと言われています。
人が朝起きて夜寝るまでに、ほんのわずかな非日常を過ごす時間があるとしたら、それはアートと重なり得る。映画を観に行く、料理教室に行く、ヨガをするとか何でもいいんだけど、そういう非日常の時間は、年齢、性別、立場や住んでいる場所の違いを超えて一緒に共感できる。
アートは日常にほっとする時間を与えるものだし、発見ももたらします。
(荒神)
アートの役割は、許すこと、寛容に世界を捉えることかな。社会の常識やルールって、特に小学生の頃は大人から色々学ぶじゃないですか。そんな感性が育つ時期に、ルールにとらわれずに世界を見ると、ふと心が躍る瞬間もある。
ふっと吹いたら消えてしまいそうな感性を許す寛容な視線を、私たち大人が手放さず持っていたい。芸術祭は、そういう気持ちで作っています。

■変化し続ける2か月間
◇芸術祭の見どころを教えてください。
(南川)
僕たちのディレクションするメイン会場・旧市民会館おおみやでは、音楽ライブやパフォーミング・アーツ(身体を使って表現される芸術)、映画上映など毎日のようにさまざまな作品が発表されます。他にも市内各所で数えきれないくらいのプロジェクトが展開され、常に動き続ける芸術祭になります。
明日来たら違う芸術祭なんじゃないかと思うくらい、どんどん変わっていく。ものすごくたくさんの営みが芸術祭のなかで起こっていくので、ぜひその場に遭遇してほしいです。

◇目[mé]の皆さんと近藤さんが芸術祭で演出する「SCAPER(スケーパー)」とは何ですか。
(南川)
スケーパーは造語で、景色を意味する「scape(スケープ)」に接尾辞「‒er」を付けて、「景色の人」とか「景色のもの」という意味を持たせています。これをさまざまな場所で日々展開しようとしています。
たとえば、絵に描いたような画家とか。ひげを蓄えてベレー帽にパイプをくわえて絵を描いている画家って、あまりいないかもしれない。絵を描いている姿そのものが偶然なのか、それとも演出なのか見分けがつかなくなる。そういう人やものをスケーパーと呼んでいます。
(近藤)
現実と演出の境が分からない状況をスケーパーという言葉に集約するのはいい発見。初めて南川さんから聞いたとき、天才かなと思いました(笑)
僕らが見ている風景の中には、たとえば会社への道を急いで走っている人や、暑くて汗を拭っている一見普通の人がいます。それに振り付けをすることもできるわけで、現実を少しいじるというスケーパーの演出に当事者として関わることができるのは、非常に面白いし、楽しみですね。

■身構えずに見て欲しい
◇現代アートを楽しむコツはありますか。
(荒神)
アートを身構えて見ないこと。作品が持つ意味を正確に理解しなきゃと思う必要はありません。
自分自身が生活のなかで得た経験や感じてきたことと、この作品はひょっとするとつながっているかもしれない。そんな風に自分と近いものとしてアートを見ると、楽しめるかもしれません。

◇芸術祭をどう楽しんでほしいですか。
(近藤)
あまり気負わずに、会場に訪れてほしいですね。僕自身、「アートを見に行くんだぞ」という気持ちで見に行くことはほぼないです。知らない海岸に行って、転がっている石ころを見るのと、会場に訪れ、現代アートを見るのはそんなに変わらない。人間、穴があったらのぞいちゃうし、キラキラしていたり、何か大きくて立派なものがあったりするとつい目がいく。
気に入ったものがあれば、その前に長くいればいい。作品に付いているタイトルを見て、「よく分かんないな」と首をひねる。そういう感じでいいんじゃないですか(笑)
(荒神)
公園に遊びに行くくらいの気持ちで見に来てほしい。会場ではさまざまなことが目まぐるしく起きているので、ぜひ体感してください。

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