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自治体の皆さまへ

(特集)関東大震災から100年いのちを守るための備えを -1-

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埼玉県狭山市

今年は、関東大震災の発生から100年の節目の年です。この地震は、東京・横浜を中心とする関東周辺に甚大な被害をもたらしました。今後発生するといわれている首都直下地震や南海トラフ巨大地震などに備えて、今、私たちは何ができるのでしょうか。
今月は、過去に発生した大地震の被災地へ救助隊として出向いた方のお話と、改めて確認しておきたい地震への備えを紹介します。

■今、あなたは何ができるのか
~救助隊の視点で伝える、地震への備えの大切さ~
今回お話を伺ったのは、市内在住で埼玉西部消防局・所沢東消防署の署長・片岡治さん。平成7年の阪神・淡路大震災、16年の新潟県中越地震、23年の東日本大震災において、災害派遣として被災地に出動されました。被災地で感じたこと、いつ起こるか分からない震災のために私たちができることなど、実体験を交えてお話いただきました。

◇救助隊として出向いた3つの現場
私は全ての現場で、要救助者や行方不明者の救出・捜索を中心に任務を行いました。阪神・淡路大震災では都市部を中心とした家屋の倒壊、新潟県中越地震は山間部における集落の孤立、東日本大震災は沿岸部での津波が主な被害で、どの災害も毛色が違います。今後、関東地方に被害が及ぶ大地震が発生した場合、山や海のない狭山市は、3つの震災の中では阪神・淡路大震災に近い被害が起こると考えられます。

◇まるで「戦後の焼け野原」
阪神・淡路大震災が発生した時は、全国的な消防の広域応援体制が確立されていませんでした。テレビを見て「すごいことが起きた」と思い、当時の旧所沢市消防本部単独の判断で、救助工作車を走らせ被災地へ向かうことに。この震災で倒壊した高速道路の手前からは、通行止め箇所を迂回して神戸市内へ向かいました。その時点ではそれほど被害があるようには見えませんでした。
しかし、その後目にした神戸市内の様子はまるで「戦後の焼け野原」。一般家屋だけでなく、鉄筋コンクリート造のビルまでもが崩れ落ち、火災による黒煙もいくつか見えました。「自分たちに一体何ができるだろうか」と不安が襲ってきたことを今でも覚えています。

◇公的機関だけでは間に合わない
市役所の建物は倒れかけ、職員も混乱状態。住宅地図のコピーをもらい、自分たちの判断で検索救助活動を行いました。活動中も余震があり、至る所で徐々に建物が崩れていきました。
発災直後は公的機関の救助が間に合わないことが考えられるため、自分たちで行動することができるかどうかが重要だと思っています。初期消火、応急手当、負傷者搬送など、やれることはたくさんあります。

◇住民の知恵が命をつなぐ
この震災では、救出活動のほとんどが住民同士によって行われたと聞いています。救助中、乗用車に載せているパンタ型のジャッキが家屋にいくつも残されていました。住民が知恵を絞って救出した証です。また、避難所では新聞紙を体に巻いたり、フィルムラップを食器に巻いたりするなどの工夫が多く見られ、これらはこの震災で生まれた住民の知恵として現在も語り継がれています。想像もできないほどの甚大な被害があった中で、住民同士が声を掛け合い、助け合う姿が命をつないだと言っていいでしょう。

◇予想外のことが起こる、だから事前の備えが大切
阪神・淡路大震災を契機に、消防の全国的な広域応援体制や行政の整備体制が進んだことから、東日本大震災では避難所の開設や支援物資などの搬入も早い時期から行われました。それでも津波の被害は予想以上で、災害は予測ができないものだと実感しました。地震のタイプや震源地によって、被害の大きさ・種類は大幅に変わります。どんな時でも、自分の命を自分で守る行動が第一。そのためにも、事前の備えが必要です。

◇たった一度の経験が、役に立つ
被災地では、大きな家具の下敷きになって命を落とした方を多く見ました。そのため、事前に家具などを固定しておくことは有効です。また、防災訓練や救命講習などに参加して、疑似体験を積むことも大切。特に地域で行う訓練では、近所の人と顔見知りになることができます。震災時は、知っている人がいるだけで心強いものです。
そして何より大切なのが、さまざまな角度から「地震が発生したら…」という想定をしておくことです。どんなに備えても想定外の災害は起こるため、完璧な備えはありません。しかし、一度でも考えたこと・やったことは、いざというときに役立つ可能性があります。

◇緊急地震速報が鳴ったら行動を
緊急地震速報が鳴った時には、避難する行動を起こしてみましょう。ただ聞いているだけではなく、それが大震災であるかもしれないと考えて行動することが大切です。仮に小さな揺れだったとしても、訓練になったと思えたらそれで良いのです。

◇今、できる備えを
近年発生が懸念されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震は、今後30年以内に発生する可能性が70%以上とも言われており、日本の広範囲で甚大な被害をもたらすことが想定されています。大切な命を地震災害から守るには、まずはあなた個人の行動が、そして家族、住民同士の絆きずなが大切だと私は考えます。今、あなたができることは何かを考えた上で、家族や地域の方々とも話し合い、いざというときに備えておきましょう。私のこの話が、備えへの行動のきっかけになったら嬉しく思います。

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