文字サイズ
自治体の皆さまへ

認知症と向き合い 変わるわたしたちと、変わらぬ絆(1)

4/49

埼玉県狭山市

「あなたの身近にいる大切な人が認知症になったら?」
高齢化が進む日本社会。厚生労働省によると2025年には65歳以上の人のうち約5人に1人が認知症になると予想されています。認知症は、記憶や判断力などの認知機能が低下して社会生活に支障をきたす脳の病気で、年齢を重ねるほど発症する可能性が高まります。
9月は世界アルツハイマー月間。この機会に自分の身近な人が認知症になった時のことを考えてみませんか?

市内で暮らす猪鼻秀俊さん・伸代さんご夫妻。秀俊さんは今から8年前、59歳で若年性アルツハイマー型認知症を発症しました。取材に伺った際には、発症後に始めた趣味のオカリナ演奏を披露してくださいました。
秀俊さんが発症した当時の心境や、日々の暮らしぶりなどを伸代さんに語っていただいています。

■(インタビュー)病気を隠すことなく伝えるそして笑顔で生きていく
◇診断された日に掛けてもらった言葉
主人が病気を発症したのが2015年。病気が分かったきっかけは、勤務先の上司の方が主人の変化に気付いて受診を勧めてくださったことです。「まさか」という気持ちと「もしかして」という気持ちで受診すると、若年性アルツハイマー型認知症と診断を受けました。その時、読むのが得意だった電化製品の取扱説明書が理解できなかったり、書類に子どもの名前を記入する時に手が止まってしまったりしていたことを思い出しました。病名を聞き、呆然としている私に「病気は恥ずかしいことではないし、なりたくてなったわけではないから周りに隠さなくていいよ」と言ってくれた主人の言葉は私の心を軽くしてくれました。

◇「知っていてもらう」ことが安心なんです
そこから主人と私、二人三脚での暮らしが始まりました。診断されてからもう9年目になりますので、その間何がどう変わってきたかを端的にお話しするのは難しいのですが、主人だけでなく、私自身も安心して暮らしていくにはどうしたらいいかを考えるようになりました。
例えば、今の家に引っ越した際、周辺の方に主人の病気についてお伝えしました。先日、主人が家の外に一人で出てしまいそうになったのですが、近所の方が声を掛けてくださったことで大事にならずに済み「お伝えしていて良かった」と思いました。「知ってくださっている」という気持ちが安心して暮らせることにつながっていると思います。

◇前向きな気持ちになるために
介護を続ける中で、時には気持ちがパンクしそうになったり沈んだりすることもあります。そんな時はすぐに子どもたちや周りの方へ相談するようにしています。主人とケンカをすることもありますが、病気によって能力的にできなくなってしまったこと以外は、はっきり意見として伝えています。でも「ケンカは翌日に持ち越さない」。これをマイルールにしています。
自分が前向きな気持ちになれた体験として印象に残っているのは、主人と同じ病気を持っている方が、テレビで生活の様子を包み隠さず笑顔で話されているのを観たことです。「認知症になってもあんな風に笑顔で生きていけるんだ」と、元気や勇気を頂き、自然と主人との会話が弾みました。

◇まずどこへ相談するか知っておく
私たちは「家族の会」を通して、同じ病気の方やそのご家族、オカリナ担当で参加しているバンドの仲間(〝これでいいのだバンド〟といいます)と出会い、それがきっかけとなって講演会でお話をしたり演奏したりする機会を頂きました。かつて私たちがテレビで観た同じ病気を持つ方から元気や勇気を頂いたように、主人がオカリナを演奏する姿や私たちの体験談で、認知症に対して少しでも前向きな気持ちになってくださる方がいらっしゃれば、何より嬉しいです。
「今はまだ認知症を自分事として考えるのは難しい」と思っている方は、身近な方が認知症と診断されたとき、まずどこに相談するかを知っておくだけでもいいと思っています。早い時期にいろいろな人とつながり考えてもらえることで、1人で抱え込むことなく介護に取り組むことができると思います。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU