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ふるさとの文化財探訪 第112回

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大分県九重町

『小倉神社を飾る彫刻』

文化財調査委員 梅木恵美

町田川を渡り、小倉岳のふもとに小倉神社があります。
子どものころ、歩いて遠足に行き、境内でお弁当を食べた記憶が懐かしい思い出の場所です。
小倉神社と言えば、秋のお祭りで奉納される県指定無形民俗文化財である町田楽が有名ですが、その小倉神社の中でも、本殿は九重町の指定有形文化財です。
上棟時の木槌墨書によると、嘉永五年、石碑銘によると安政二年と推定されます。大工棟梁は佐藤左之策。52歳の時の作品です。
嘉永五年は今から171年前の1852年。徳川12代将軍家慶の世、伊豆の下田港にロシアの船が来航した年、翌年にはペリーが来航した幕末の時代です。
本殿は大型の『三間社流造。銅板葺きで向拝三間、浜床付』
本殿とは、いわゆる「神殿」。神霊を宿した御神体を安置する場所・建物であり最も大切な場所とされています。神社の一番後ろに建てられ、一般人は入ることはありません。「本殿」の手前に「幣殿」、そして「拝殿」と、一見くっついた状態になっていますが別々の建物です。普段、参拝する場所は拝殿の前であり、祈祷を受けたりする時に神社の社殿の中に入る建物が拝殿です。お祓いやご祈祷の最中に榊をお供えしたり、お神酒やお米をお供えする場所が幣殿です
本殿の正面から見ると、大きな柱が四本あり、柱の間が3つなので「三間」
「流造」とは、横から見ると屋根の形が本を伏せたような流れる曲線の切妻屋根のことです。参拝者の雨除けのために前だけ長くなっています。「向拝」とは、その雨除け部分に張り出した庇の下を指します。「浜床」とは、今でいうとウッドデッキ?向拝の階段下の床などを指します。難しい説明はこの辺で。
神社に行って、まずはお参り。ぐるりと境内を歩き、じっくり建物を見ると、ひときわ目につくのが、立派な彫刻です。
植物としては菊花、竹、牡丹の花。流れるような曲線の水流、雲文。そして様々な動物が生き生きと。鷲、鶴、鳳凰。鯉は体に水流を巻いて動き出しそうなほど見事な彫刻に現れています。同じような手法が、佐賀県伊万里市の伊万里神社などでも見られるとのこと。
そして向拝部分には、ボスキャラともいえる、あの動物が本殿を見守っているかのようです。
これは見てのお楽しみ。ぜひ秋季大祭へ、明るい時間に足を運び直接見て頂きたいと思います。

≪参考文献≫九重町の建造物(九重町教育委員会)九重町文化財調査報告書第28輯

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