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山香病院だより vol.184「糖尿病とスティグマ」

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大分県杵築市

■「糖尿病とスティグマ」
内科 矢野 恵司(やのけいし)

4月から内科医として山香病院で勤務しております、矢野恵司と申します。暑い日が続きますが、体調にお変わりないでしょうか。
今回は、予備軍を含めると国民のおよそ10人に1人がかかっていると言われている、糖尿病についてお話させていただきます。
みなさんは糖尿病という言葉にどのようなイメージをもちますか。「おしっこから糖が出る病気」「生活習慣病」と思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
実は、糖尿病という名前は正確に病気を表現しているとは言えません。尿糖の有無は診断には関係ありませんし、糖尿病の方でも尿糖が出ないことも多いです。
糖尿病は大きく1型と2型に分けられ、発症メカニズムには膵臓から分泌され血糖値を下げる「インスリン」というホルモンが深く関与しています。1型は何らかの原因で、膵臓のインスリンを出す細胞が壊れてしまいます。2型はもともと膵臓からインスリンが出にくい、あるいはインスリンが体に作用しにくいなどの遺伝的要素に、食生活や運動不足の問題が加わり発症します。1型は何らかの原因で発症してしまうため予防が困難ですし、2型においても遺伝的要因が関係するため、同じような生活をしていても糖尿病になる方もいれば、ならない方もいます。
このように、糖尿病の発症は自分の力ではどうしようもない要因が関与していますが、「糖尿病になったのは自己管理ができていなから」「食べ過ぎているから」といった誤解が、一般の方だけでなく我々医療従事者の中にも残っています。誤解から生じる「不名誉な烙印=スティグマ」のために、就職や昇進で不利になったり、住宅ローン等の契約を断られたりする事例があり、社会問題となっています。スティグマのために糖尿病であることを隠している方や、糖尿病であることを自分のせいにしてしまっている方がいます。
糖尿病の治療は近年大きく進歩し、糖尿病の方とそうでない方の寿命はほぼ変わらないという研究結果も報告されています。糖尿病の方も、糖尿病がない方と変わらない一生を送ることができるようになってきています。
正しい知識が広まり、糖尿病の方が安心して生活できるような社会を目指していきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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