文字サイズ
自治体の皆さまへ

市史だより

9/29

大阪府和泉市

■地域の歴史を未来へ
庄屋の屋敷は村の「文書館」

1996年に始まった市史編さん事業では、有名無名問わず、数多くの古文書や資料を調査してきました。こうした郷土の歴史遺産を未来へ伝えるには?

明治維新から150年目にあたる2018年の9月4日、近畿地方を襲った台風21号は市域にも多大な被害をもたらしました。
死者・重傷者はいませんでしたが、軽傷26人を出しました。住家被害は大きく、全壊2戸、半壊37戸、一部損壊は2、982戸にのぼりました(府危機管理室「台風21号にかかる被害状況等について(第30報)」より)。
それから少し後に、古文書の所蔵者から、文書の保管に関する相談が複数寄せられました。
市史編さん事業は、1996年に始まり、四半世紀を経過しました。
この間、地域や所蔵者の家で大切に保管されてきた貴重な古文書や資料を調査し、研究を深め、その成果の一部を『和泉市の歴史』などにまとめてきました。調査したうち一万二千点を超える古文書などが市に寄贈・寄託(きたく)される一方で、それをはるかに越える点数の古文書が、それぞれの地域・所蔵者の家で大切に保管されてきました。
古文書を持ち伝えてきた旧家の多くは、江戸時代に庄屋を務めた「家」でした。庄屋の「家」は、個人の「家」であると同時に、その村の「役場」の役割も果たしました。領主からの法令や指示書、村人からの訴状や願書、村の地図や土地台帳などの「公」文書が庄屋の「家」に残されました。
明治維新を経て、役場の機能が庄屋「家」から失われてからも、庄屋「家」に伝わる文書は、大切に保管され、重宝されました。庄屋「家」は、いわば地域の文書館でした。
市域の庄屋屋敷は、トタンで覆う場合もありますが、茅葺(かやぶき)屋根のままの建物もいくつか残っています。茅葺屋根は定期的なメンテナンスが必要です。しかし、修理しようにも原材料や職人の調達が難しく、費用の面でも困難を極めます。
「家」(屋敷)自体も、生活様式の変化や世代交代など様ざまな理由によって、維持し続けることが難しくなる場合もあったようです。
台風21号は、徐じょに進行していた庄屋「家」の存続の危機、ひいては地域の「文書館」の危機を浮き彫りにしました。先祖代だいの努力で伝えられてきた「家」の宝で、地域の宝でもある古文書を未来へどのように伝えるか。
庄屋「家」の切実な相談が市史へ寄せられたのでした。
市史編さん事業が行われた四半世紀、市は都市的な発展を遂げました。この間、様ざまな有形・無形の文化財を調査しましたが、人知れず失われたものも数多くあったはずです。郷土和泉で生き抜いた先人たちの足跡を掬(すく)い上げ、調査・研究を深め、豊かな郷土の歴史を未来へ伝えるためのお手伝いができればと思います。

問合せ:文化遺産活用課
【電話】99-8163

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU