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自治体の皆さまへ

効果的な放置自転車対策は?

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大阪府大阪市北区 クリエイティブ・コモンズ

◆大阪公立大学大学院工学研究科・吉田長裕准教授に聞く
自転車は便利で環境に優しい乗り物ですが、放置されると様々な問題を引き起こします。
放置自転車を減らすには、どんな対策が効果的でしょうか?
都市交通を専門とする大阪公立大学大学院工学研究科の吉田長裕准教授に、前田昌則区長が聞きました。

◇撤去には限界
・前田区長
これまでも放置自転車に対する啓発活動や撤去に取り組んできましたが、放置自転車の減少に向けてはまだまだ課題が多いというのが実感です。例えば繁華街では夜間に働く人々の歩道への駐輪が多い。月に何度も午後7時以降の夜間撤去を実施しますが、情報がSNSで広がって一斉に自転車が移動され、撤去が終わるとまた歩道に戻される。いたちごっこです。

・吉田准教授
放置自転車の撤去にも限界があるのが現状です。

・前田
海外製の安価な自転車が増えたせいか、撤去自転車の大半は引き取りに来る人がいない。引き取られなければ、安く再販される。悪循環です。

◇駐輪場の利用促進
・前田
駐輪場の整備も進めてきましたが、歩道上に駐輪場を作るのはそろそろ限界です。

・吉田
自転車カルチャーのなかったニューヨークでは、自転車置き場を確保するために、ある一定規模の駐車場事業者に自動車駐車スペース10台につき少なくとも自転車1台のスペースを確保するように条例を定めました。日本では駐車場を転用したり、駐車場のデッドスペースを活用したりして駐輪場所を増やした事例があります。この考え方をもっと広げるべきだと思います。

・前田
私の住むマンションでもマイカーを持つ居住者が減り、駐車場に空きが生じています。修繕積立金に充てる収益を確保するために、サブリースを提案しようと考えています。同じですね。

・吉田
商業施設などは駐輪場の整備を義務付けられていますが、中にはあまり利用されていないところもあります。

・前田
駐輪場の利用を促進するために、スマホで検索できる「北区駐輪場マップ」を作りました。空き情報もリアルタイムで分かります。

◇シェアを進める
・吉田
駐輪場の整備だけでは放置自転車問題は解決しません。駐輪場整備に限界がある場合は、一部をシェアサイクルのポートに置き換える方法もあります。マンションや団地にシェアサイクルのポートを置く実証実験が北区内や堺市などで始まっています。乗り物やその置き場所のシェアを進めることは大切です。

・前田
シェアを進めて個人所有が減れば放置自転車の減少につながりますね。

・吉田
自転車シェアは、台北で1日に8回転、ニューヨークで1日4回転、国内でも1日8回転を超える事例があります。このようなモビリティのシェアは、駐輪場所を少なくするだけでなく、自動車利用の減少、外出頻度の増加といった効果も期待されています。

◇望ましい行動へ導く
・前田
大阪市営駐輪場の利用料は、どこでも上限が1回150円です。条例でそう定められています。

・吉田
民間駐車場は、利便性が高い所ほど料金も高く設定されています。公営駐輪場も需要変動の激しいエリアでは、こういった料金施策への移行を再検討する余地があります。神戸市には駅からの距離に応じて料金に差をつけた駐輪場があります。京都市は利用時間に応じて料金が変わる方式の導入を準備しています。

・前田
経済性を重視する大阪人は、公共交通機関よりも駐輪場料金が安ければ自転車を選びます。

・吉田
北区界隈では上限150円の駐輪場料金を公共交通利用時と比較しながら見直さない限り、自転車駐輪需要は大きく、駐輪場整備は追い付かないと思います。

・前田
シェアサイクルの実証実験では、自転車での移動は30分が目安でした。例えば駐輪場料金が地下鉄の1区間往復を上回る400円だったら、自転車よりも公共交通機関やシェアサイクルを選ぶ人が増えるのではないでしょうか。

・吉田
経済的なインセンティブで人々の交通行動を望ましい方向に誘導していくことが、これからの自転車施策や駐輪場の仕組みには必要です。

・前田
放置自転車はまちの安全や美観を損ないます。誰もが快適なまちづくりへ参加するという意識で、駐輪場の利用などマナーを守って自転車を利用していただければと思います。

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