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自治体の皆さまへ

【特集】誰もがありのままの自分で暮らせるように(2)

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大阪府池田市

■Interview
LGBTQ+当事者であり、現在教育現場や医療機関などさまざまな場所で講演をされている大久保曉(あきら)さんに、ご自身の経験談について語ってもらいました。

▽大久保暁さん プロフィール
1981年、女性として誕生。幼少期から赤いランドセルやスカートが苦手で、小学生のときに女の子を好きになる。20代半ばに自身がトランスジェンダーであることを自覚し、性別適合手術を受け、現在は戸籍上も男性として生活。
7年前に友人が勤めている学校で講演をしたことをきっかけに、自分の体験は人の役に立つのかもしれないと思うようになり、現在では教育現場に限らず企業・行政・消防関係・医療関係などで研修を実施。

ー自身の性について違和感を感じたのはいつですか?
小学1年生の時です。赤いランドセルをもらいました。やはり嫌だったのでしょうね。新品のランドセルをカッターのようなもので傷だらけにしてしまいました。父からかなり叱(しか)られ、泣きながら謝りました。その時の感情ははっきり覚えてはいませんが、女の子の色とされていた赤色をもらったことに抵抗があったのだと思います。

ー初めて同性を好きと気づいたのはいつですか?
小学6年生の時に女の子を好きになりました。意を決して仲の良い友達に相談すると「〇〇ちゃんのこと好きでもいいんじゃない?」と言ってくれたのです。否定されなかったことがうれしくなり、他の子にも話してしまいました。するとクラスでうわさが流れ始めたのです。「大久保さんって女の子やのに〇〇ちゃんが好きなんやって、おかしくない?気持ち悪くない?」と私の耳にも届きました。恋愛の気持ちに蓋ふたをしたのがその頃でした。

ー学生時代はどのように過ごしましたか?
中学・高校は女子校でした。意外に楽しいことが多かったです。共学だと性別で分けられることが多いと思います。女子校だとそれができないですよね。力作業などは運動部が任されました。バスケットボール部だった私は積極的に頼られる存在でした。性別を意識しなくて良かったというのが大きかったと思います。
一方、修学旅行のお風呂は嫌でした。自分の体が女性になっていくことには強く拒絶があり、それを人に見られることに抵抗がありました。タオルでしっかりと体を隠し、端の方でさっとシャワーを浴び、出ていました。目のやりどころもなく、苦痛でしかなかったです。

ー日常生活で困ることはありましたか?
トイレで困ることが多かったです。メンズファッションが多く、見た目は男性のような私は女子トイレに入ると「男性はこっちじゃないですよ」と声をかけられます。男女兼用トイレを使いたかったのですが、そこには「身障者トイレ」と書かれてあります。そこを必要とされている方が使うトイレですが、そこしか兼用トイレが無かったのです。仕方なくそちらを使い出てくると、車椅子の方が待っていることもあり、申し訳ない気持ちになりました。トランスジェンダーでトイレに困っていた人は、尿意を我慢して膀胱(ぼうこう)炎になるケースも多かったそうです。
講演でこのような話をすると、今トイレはどうしているのかという質問をされます。現在は戸籍も男性となり生きているので、堂々と男子トイレを使用しています。ただし、個室しか使用できません。男性器を付ける手術をしているわけではないのです。性別適合手術というのは、生殖器を切除する手術のことを指します。私は子宮卵巣の摘出手術をしています。ここまですると戸籍変更の要件が満たされることになります。

ー家族にはどのように話をしましたか?
30歳が目前となり、家族にカミングアウトしました。母は「言っていることは分かったけど理解できない」と言いました。父には直接話しづらく、母から伝えてもらい、2人して泣いたそうです。兄は美容師をしており、知人にゲイの人がおり、理解は早かったです。「今のままではいけないのか、お母さんが守ってあげるから」そのような言葉をもらい、うれしくはありましたが自分の意志とは違いました。そのうち母は自分が産んだからだと自分を責めだしました。カウンセリングを受けていた病院に一緒に行き、医師から「お母さんのせいではないんです。遺伝ではないんですよ」と伝えてもらいましたが、それでも母は自分を責めていました。
両親に報告をしながら治療を始め、手術もし、戸籍を移行しました。それを機に大阪に引っ越し、私のことを理解した上で採用してくれた企業がありました。それを両親に報告すると、「生きていけるんやね、社会に感謝しなさいね」と、ようやく安心してくれた瞬間でした。

ー市民の皆さんにメッセージをお願いします。
LGBTQ+の人は身近にいないのではなく、気づいていないだけなのです。これまでにも関わっているでしょうし、接してきている人たちですので、特に何かしないといけないということはありません。特別扱いは必要ないのです。ただ、傷つけてしまう言葉はあるのでそれは使わないようにしましょう。決して特別な人ではなく全ての人が多様な中に生きています。それぞれの個性を尊重できる社会にしましょう。違いがあることが当たり前であり、全ての人が一緒だと世の中は成り立ちません。違いがあることで笑ったりいじめたりするのではなく、その人らしさを大切に、寄り添い合える皆さんであってほしいです。

■講演会
▽大久保暁さんと話そう!
大久保さんと、パートナーの希望(のぞみ)さんをお招きし、お話を聞きます。参加者の皆さんとの意見交流会もあります。LGBTQ+に関心のある方、当事者や家族の方、どなたでも気軽にご参加ください。
日時:8月25日(金)午後2時~4時
場所:ダイバーシティセンター
定員:30人
申込み:7月4日(火)から電話で同センター

■展示
▽「LGBTQ+」って何?
日時:8月1日(火)~31日(木)
場所:ツナガリエ石橋1階ロビー

問合せ:ダイバーシティセンター
【電話】768・8034

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