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ときの輝き

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大阪府池田市

歴史民俗資料館特別展

■池田のたからもの 第2回
歴史民俗資料館では、10月14日(土)から12月3日(日)まで、「池田のたからもの」をテーマにさまざまな市指定文化財(一部は府指定)を展示する特別展を開催します。
2回目となる今回は、有形民俗文化財の中から、「民具」とも呼ばれる道具類をいくつかご紹介します。

◇桶(おけ)・樽(たる)を作る道具―酒造りのパートナー
江戸時代から現代に至るまで、池田は酒どころとして知られており、「呉春(ごしゅん)」や「緑一(みどりいち)」は通つうの酒として左党に愛飲されています。
酒の仕込みに欠かせないのが桶や樽といった容器類です。大きなものでは容量30石(こく)(約5400リットル。一般的な浴槽の約20倍!)というものもあります。管理や取り扱いの容易さから、現代ではステンレスやホーローのものに切り替えている酒蔵が多くなりましたが、かつては木製の桶や樽が使われており、「酒屋一軒に桶屋一軒」と言われるほど深い関係にありました。
本展に出品される「旧武呂(むろ)家桶・樽作り用具一式」(大阪府指定有形民俗文化財)は、池田市で最後の桶・樽職人となった故・武呂栄氏が使っていた道具類です。鋸(のこぎり)や鉋(かんな)といった、大工道具に似たものもたくさんありますが、桶のカーブに合わせて木を削る「銑(せん)」と呼ばれる刃物や、部品の形を確かめるための「桶定規」など、特徴的な道具も数多く遺されています。その総数は364点。桶や樽は日常生活の中で多く使われていたので、いろいろな形、いろいろな大きさの製品がありました。それらをひと通り作るためには、こんなにもたくさんの道具が必要になるのです。
酒の仕込みに使う巨大な桶を作ることができる職人は、残念ながら今の日本にはわずかしか残っていません。職人がいなくなると、物の作り方、道具の使い方が分からなくなってしまいます。これからの博物館は、ただ道具を後世に伝えていくだけではなく、技術そのものを記録・伝承していくことが重要な使命になっていくでしょう。

◇踏車(ふみぐるま)―これも立派な文化財
かつてどの農村にもあった踏車(揚水車)も現在では使われなくなっています。水車の上を歩くように踏み込んで回すのでこの名前が付けられました。
江戸時代の農学者・大蔵永常(おおくらながつね)が書いた農業技術書『農具便利論』によると、踏車を製作したのは大坂の農人橋で農具商を営んでいた京屋七兵衛・清兵衛で、寛文年間(1661~72)のことだといわれ、そこから100年ほどの間に全国に広まったとされています。
歴史民俗資料館に収蔵されている踏車の一つに、江戸時代の末期に作られたものがあります。なぜそれが分かるかというと、側面に「慶應元年丑五月吉日」と墨で書かれているからです。こういうものを「紀年銘」と呼びますが、水につけて使われる踏車の紀年銘が残っていることはとてもまれです。
遠目には分かりませんが、近くで見ると修理の跡がたくさんあり、長年使われ続けたことが分かります。記録によると、紀年のある慶応元年(1865)から大正時代ごろまで使われていたようです。そして実はこの踏車、府内で現存する踏車の中では最古級のものの一つなのです。
日常生活の中で使われる道具は通常、消耗品ですので、壊れたり使い切ったりしたら捨てられてしまいます。ですので、道具が現役の間は、それらが将来「文化財」になるという感覚を持っている人はほとんどいません。時代を超えて伝わったこれらの道具は、極めて強運の持ち主だといえるでしょう。

問合せ:歴史民俗資料館
【電話】751・3019

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