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自治体の皆さまへ

[特集]知ってほしいヤングケアラーのこと(1)

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大阪府河内長野市

■子どもが子どもでいられるまちに
「ヤングケアラー」は、本来大人が担う家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことをいいます。
保護者の病気や貧困など様々な要因やケースがあり、本人や家族に自覚がなく、支援が必要であっても表面化しづらい、家庭のことだからと声をあげにくい構造があります。
いかに周りにいる大人がその存在に気づき、支援につなげていけるかが重要です。
まずは知ってください、ヤングケアラーのこと。

■[Interview]元ヤングケアラーの想い
ヤングケアラーの交流の場を提供するNPO法人ふうせんの会のスタッフで、元ヤングケアラーの川嵜(かわさき)さん。現在44歳の彼は、3歳の時に父親が亡くなり、当時30代の母親と70代の祖母との3人暮らしになりました。ヤングケアラーという言葉も、自分がそれに当てはまることも知り得なかった川嵜さんに、当時の話とこれからをお聞きしました。

○4歳ごろから一人で買い物に
4歳のころに、母が心臓を悪くして外へ出かけることができなくなりました。祖母も足が悪かったので、私が食料品や日用品を買いに行くようになりました。昼間は幼稚園にスクールバスで通いながら、夕方は一人でスーパーへ。一度にたくさん持てないので毎日行っていましたね。食事は母と祖母が手分けして作り、父が残してくれた貯金を切り崩して生活していました。

○小学3年生から一手に担う家事と祖母の世話
祖母が歩くことが困難になり、母も寝込むことが増えました。学校から帰宅後買い物へ、購入した総菜を食卓に並べ、そこから二人の薬をもらいに自転車で病院へ。祖母の体を拭いたり、一人でトイレまで行けないのでポータブルトイレを設置し、座れるようにサポートをしていました。

○自分がいなければ生活ができない状況に
中学校のころには祖母が寝たきり状態になり、昼夜問わず排泄(はいせつ)の補助が必要なこと、自身が精神の疾患になったことで学校を休みがちに。このころから母が料理できる回数も週に1回程になり、朝昼晩の食事も用意するようになっていました。
部活で忙しい友だちとも疎遠になり、みんなのように部活に入ってみたかったですが我慢しました。家や家族のことだからと、特に学校や先生に助けを求めませんでした。「学校と家は別」という考えがあったんだと思います。

○自分を知ってくれている安心感
祖母の世話があるので、高校は授業時間の少ない定時制に通い始めました。しかし、祖母が入院したことがきっかけで、母が精神的に不安定になり、めまいを頻繁に起こして救急車で運ばれることが度々ありました。母からは、学校に行かないでほしいと言われたこともあります。
学校を休みがちになった時、先生がどうしたんだと声をかけてくれました。その時に初めて家のことを打ち明けることができ、少し楽になれたんです。問題の解決にはなりませんが、自分を知ってくれている人がいるという安心感を感じることができました。

○家族優先の人生の選択肢
19歳で高校を卒業したあと祖母が退院しました。その時に病院のソーシャルワーカーさんが訪問看護や介護のサービスを手配してくれました。そこで初めてそういったサービスがあることを知り、週2回3時間ほどみてもらいました。その間、本屋でアルバイトをしたのですが、自分で選んだ仕事にチャレンジできてとてもうれしかったです。サービスについてもっと早く知っていたら、進学や就職など、もう少し人生の選択肢が増えていたのかなと感じます。
25歳の時には母が大腿骨を骨折し寝たきりに、祖母は介護施設へ入所しました。そこから母が亡くなる、私が39歳になるまでの間二人で暮らすのですが、母は私以外に触られることを嫌がりました。ヘルパーさんたちが来ても、私が世話をしなければ、という責任感から、6年勤めた本屋を辞めざるを得ませんでした。

○同じ境遇の人の力になりたい
ずっと二人でがんばってきて、精神的な支えでもあった母が亡くなった時、死を考えたこともあります。そんな時に、近所の人がたまたまテレビで見たというふうせんの会代表の方を連れてきてくれました。そこから同じような過去を持つ人とつながり、ケアの経験や思いを共有することで自分もがんばっていこうという気持ちになれたんです。
現在はスーパーで働きながら、ふうせんの会のスタッフもしています。社会とのつながりを大切にしながら、自分の経験が少しでも役に立てばと、講演をしたり、相談メールに答えたりしています。自身がヤングケアラーという認識がなく将来の選択肢を狭めてしまうことがないように、少しでも同じ境遇の人の力になりたいと思います。

■姿が見えにくいヤングケアラーの実態
ヤングケアラーと聞くと、自分とは縁遠い話だと思うかもしれません。しかし、厚生労働省が令和2年度に行った全国の中学2年生を対象に行った「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」では、世話をしている家族がいると答えた生徒が5.7%、17人に1人という結果が出ています。その中でも、世話について相談した経験がないと答えた生徒の半数以上が「相談するほどではない」と回答しています(下図)。世話をしている家族がいる人の中で、自身がヤングケアラーだと自覚がない人も多数いることが分かりました(下図)。

○世話について相談した経験

相談しない理由の一部:
・相談するほどではない
・相談しても状況が変わると思えない
・家族のことのため相談しにくい
・誰に相談すればいいか分からない

○自分がヤングケアラーに当てはまるか

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