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人権コラム「しあわせ」

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大阪府河南町

◆性的同意 -紅茶を飲むか飲まないか、それはその人が決める-

2019年、性暴力に抗議するために、花を身につけて多くの人々が集まるという「フラワーデモ」が全国各地に広がった。これは当時性犯罪事件に対して連続して無罪判決が言い渡されたことに対する抗議だった。なかでも、中2の頃から娘が性的虐待を受けていたと認定しながらも、「抵抗することが著しく困難な状態」ではなかったとして実父を無罪とした名古屋地裁の判決は、日本の司法が性犯罪について無理解であることを露呈するものだった。その後、名古屋高裁により父親の有罪は確定したが、「抗拒不能(身体的・心理的に抵抗するのが著しく難しい)状態」であることを証明しなければ、同意したものと見なすという日本の刑法の改正は必須となった。

2023年、ようやく改正刑法が成立した。改正点のひとつが「同意のない性的行為」を処罰する「不同意性交等罪」の創設だ。「同意ない性行為は犯罪になり得る」ことが明記され、たとえば「意識がはっきりしない状態であること」や「経済的社会的関係の地位に基づく影響力があること」など、暴行や脅迫がなくても性犯罪となる行為の例が具体的に示された。しかし、「性的同意」とは何なのか、まだ日本ではなかなか周知されていない。イギリスのテムズバレー警察署が製作したショート動画に、性的な行為を「紅茶」に例えて、「性的同意」を相手に確認する時の考え方を学ぶ3分ほどのアニメーションがある。イラストも可愛いし日本語の吹替動画もある。市民啓発や学校教育の教材としても有効だ。少し内容を紹介しよう。

まず、動画は同意の基本的な考え方からはじまる。「きみが『紅茶飲む?』と聞いて、『うん、飲みたい。ありがとう』って相手が言ったら、紅茶が欲しいことが分かるよね。もし、『紅茶飲む?』って聞いた時、『うーん、どうかなあ…』って言ったら、その人は紅茶を飲まないかもしれないし、もし飲まなかったとしても、これがすごく大事なこと。無理やり飲ませちゃだめ。君が紅茶をいれたとしても、飲むかを決めるのはその人自身なんだ。もし『いらないよ』って言われたら、紅茶をいれちゃいけない」また、過去にOKと言ったからといって、それは「いつもOK」ということを意味しないということについても、このように説明している。「もし先週の土曜日に紅茶を飲みたいって言ったとしても、その人がいつも紅茶を飲みたいわけじゃない。勝手にお家に行って、先週飲みたがってたよね、と無理に飲ませたり、寝起きの人に、昨日の夜飲みたいって言ってたじゃん、って口に流し込むのもだめ。」そして、動画の最後はこう締めくくられている。「紅茶を飲みたくない人に、無理やり飲ませることがいかに馬鹿げたことかわかれば、セックスも同じ。したくない時もあるし、するかどうかを決めるのはその人自身なんだ。紅茶だってセックスだって、相手の同意が大事ってことなんだよ」ぜひ一度、試聴してはどうだろうか。

・日本語吹替版「Consent–it’ssimpleastea(日本語版)」
【URL】https://www.youtube.com/watch?v=-cxMZM3bWy0&t=10s

神村早織(大阪教育大学)

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