■墨は語る(3) ~豊中遺跡「田井」と記された墨書土器~
本市北豊中町から東豊中町に広がる豊中遺跡では平安時代に集落が営まれており、集落の一角から平安時代後期の井戸が見つかりました。井戸は四隅に柱を立て、その間に横方向に木を組むという作りで、その内部から土器などが80点以上出土しました。これらの土器は、ただ捨てられたものではなく、不要となった井戸を埋め戻す際に、井戸の神様を鎮める祭祀として埋納したものと考えられます。
これらの土器のうち、土師器の皿5点の底部に「田井」、1点に「田井殿」という墨書がありました。土器への墨書は、そのものが帰属する部署や所有者を示すために行うことが多く、この土器が出土した井戸は、田井氏が所有する館にあったものと考えられます。田井氏は宇多源氏につながる、近畿地方を地盤とした一族です。豊中地域周辺の開墾を指導する有力者として、この地に暮らしていたのではないでしょうか。残念ながら発掘調査では館や住居の痕跡は見つかっていませんが、周辺地域に未知の遺跡が残っている可能性があり、今後の調査が期待されます。
次回は「墨は語る(4)」をお届けします。
問合せ:生涯学習課
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