日本人は魚を刺身で生食する習慣があり、特に釣りがお好きな方は釣り上げたイカやアジなどを自分で捌いて新鮮な刺身で食べることに至福の喜びを感じることでしょう。しかし釣り上げられて死んだ魚のアニサキス寄生虫(以下「アニサキス」)は、内臓から筋肉へ移動します。それを間違えて生食すると、その数時間後に周期的な強い胃痛を発症します。食品衛生法による食中毒届出も必要な胃アニサキス症です。
実は、この痛みはアニサキスが胃粘膜を噛んでいるためでなく、粘膜内に侵入したアニサキス抗原が引き起こすアレルギー反応とされ、腹痛、嘔吐の他、広範な臓器浮腫を呈する場合もあります。
アレルギー治療薬も考慮されますが、まずは上部消化管内視鏡での摘出が必須です。アニサキスが複数で見つかることもあり、摘出後、すぐに症状は軽快することが多いです。
さて、筆者も好きな回転寿司店では、家族連れでお寿司を食べている風景をよく見かけます。しかし、そこで提供されている魚介類でのアニサキス症の事例報告は、とても少ない印象です。その理由として、養殖魚利用(アニサキスが寄生しにくい生育環境)や死滅するまでの冷凍処理を含めた適切な衛生管理の効果と聞きます。
白いイカの身に潜む透明かつ小さなアニサキスを見つけるための特殊ライトも安価で購入可能です。醤油やワサビは無効であり、釣った大物は、迅速に内臓を除去するとともに、家庭用冷凍庫の場合には、マイナス18℃付近かつ48時間以上の冷凍処理を行い、安全な刺身にしてご賞味を!
奈良県医師会
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