東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
■非日常を乗り越える日々の暮らし
NPO法人都市デザインワークス理事、宮城学院女子大学准教授 佐藤芳治(よしはる)
○「木を植えた男」
ジャン・ジオノ/著 フレデリック・バック/絵 寺岡襄(たかし)/訳
あすなろ書房 刊
画力にグッと引き込まれる絵本です。フランスの荒れ地に毎日ドングリを植えていく男「ブフィエ」が描かれます。30年以上、2度の世界大戦の期間もずっとさまざまな木を植え続け、やがて自然環境や村の暮らし、人の心をも蘇(よみがえ)らせた一人の信念のお話です。
私も震災後、津波で流された海岸林の再生に取り組んでいます。ブフィエのように一人ではなく、市民みんなで育てる「ふるさとの杜再生プロジェクト」です。木を育てることを通じて震災を忘れないように、豊かな自然との触れ合いが皆の心を耕すように。「継続は力なり」とこの本が後押ししてくれます。
○「震災・コロナ子どもの遊びと遊び空間―仙台・冒険広場の記録」
加藤理(おさむ)・根本暁生(あきお)・三浦忠士(ただし)/著
港の人 刊
海岸公園冒険広場には、子どもに寄り添って遊びの世界を広げるプレーリーダーがいます。津波の被害による非日常の地域の中で日々の遊び場づくりや運営に取り組んだプレーリーダーの奮闘記です。「遊ぶなかで自らを癒(いや)す子ども/遊びが生み出す気持ちのゆとり/居場所をつくる/仮設住宅が異世界に」など、震災後の遊びの様子が記されています。非常時だからこそ、子どもが大人の干渉から逃れて「『何もしない』時間」や「隙間」を持てる遊び場が求められたことが分かります。それはさまざまな制約や同調圧力に囲まれている誰もの日常の中にあってほしいものです。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
【電話】261・1585
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