平成23年3月11日に発生した東日本大震災から、今月で13年となります。多賀城市内では、震災の経験を後世に伝え、1人でも多くの命を救うため、さまざまな取り組みが行われています。今回は、その一部を紹介します。
■保育所・幼稚園で大規模災害を想定した避難訓練を実施しています
「突然大きな地震が来たら、子どもたちの命を守れるのか」
本市では(一社)Bird’s-eyeと連携し、防災士資格を持つ郵便局長、地域住民、事業所などが連携し、大規模災害を想定した避難訓練を実施しています。今年度は、新たに私立の保育所・幼稚園と避難訓練を実施し、子どもたちの命を守るためにどう行動すれば良いかを実践しました。
・周囲に危険がないかを確認し、広がらないように注意して避難します。これまで何度も訓練を重ね、冷静に行動していました。
・町内会の見守り隊など、地域住民も参加して、園児たちの安全を見守りました。
・近隣の高校生や企業の社員も避難訓練に参加し、園児たちの避難をサポートしました。
□参加者の声
・再び災害が起きた時に備えて
できる限りの対策をしたい東日本大震災の被災経験から、毎月の避難訓練に加え、日ごろから子どもたちに絵本や動画で約束事を伝えています。子どもたちを預かる立場として「また大地震が起きたらどうしよう」という恐怖があり、食料や日用品などの備蓄はもちろん、テントや救命ボートなど、考えられるさまざまな備えをしています。
今回の避難訓練では、地域の皆さんの協力をいただきながら実施できたことで心強さを感じました。地域の皆さんに保育所の存在を今まで以上に認識してもらえるよう、地域との連携を強化していきたいです。(大代保育園園長 鈴木慶祐さん)
・訓練に参加することで視点が変わった
防災士の資格を持つ郵便局長が保育施設の避難訓練に参加することは、全国的にも先進的な事例でした。実際に訓練に参加することで、幼児の視点に立って地域を考えるようになりました。継続することが大切なので、今後も参加して、地域と顔の見える関係性を築いていけたらと思っています。(多賀城郵便局局長 千葉勝之さん)
■多賀城のノウハウを他地域でも活かす
令和5年11月に大代保育園・柏幼稚園で実施した避難訓練には、本市での取り組みを参考にしたいと県外からも多くの人が視察に訪れました。
訓練前日には、東日本大震災当時、石巻市の幼稚園に通っていた長女愛梨ちゃん(当時6歳)を亡くした佐藤美香さんによる講演や避難訓練ワークショップが行われました。県外からの参加者は、盲点となりがちな普段何気なく使っている歩道橋や幹線道路の信号機付き横断歩道も、地震による損傷や停電で使えなくなる可能性があることに改めて気づいた様子でした。訓練当日は大雨となり実際に園児は避難しませんでしたが、雨の中で訓練することで、防水対策の必要性を多くの参加者が実感する機会となりました。
・佐藤さんは講演で「いざというときに人は訓練以上のことはなかなかできない」と、訓練の積み重ねの大切さを訴えました。
・ワークショップでは、避難ルートとして想定される道路を実際に歩き、危険と思った箇所などをグループで共有し、適切な避難ルートを検討しました。
・雨の降る中、園児たちを避難させるカートを使用して、避難所まで移動しました。雨天時の避難は、想像以上に大変だと多くの気づきがありました。
□参加者の声
・地域の防災リーダーを増やしたい
災害発生時、避難ルートなどの大事な決定を責任者1人で判断してしまうと、誤った判断だった場合、致命傷となるため判断できる防災リーダーは複数いたほうが良いと考えています。県外からの参加者がそれぞれの地域で活動し、防災リーダーが増えることを願っています。(一般社団法人Bird’s-eye代表理事 菅原淳一さん(アイリンブループロジェクト))
・多賀城で得た知見を地元地域に還元したい
実際に被災地を歩いたり、同じ目的意識を持つ参加者と意見交換をしたりして、たくさんの気づきを得ました。多賀城の地形は浜松と似ている点も多くあり、地元に置き換えて考えることができました。
浜松に戻って報告会を開き、多賀城で得たことを地域の皆さんに共有して、これからの防災・減災の取り組みに活かしたいです。(浜松市市民協働センター(静岡県) 鈴木恵子さん)
●史都・多賀城防災・減災アーカイブ「たがじょう見聞憶」
「たがじょう見聞憶」は、多賀城市で起こった東日本大震災の記録を収集、保管し、体系的に整理したデジタルデータベースです。震災の記録を未来へ伝え、今後の防災・減災に役立てることができるように、インターネットで公開しています。
災害時に市内で何が起きていたか、発災後から現在までの写真や映像のほか、多賀城市民をはじめ、復興を応援してくださった方々へのインタビュー、復興事業の進捗、過去に多賀城を襲った災害史などについても掲載しています。
今一度、東日本大震災時に起きたことを振り返り、防災・減災の取り組みの一助として活用してはいかがでしょうか。
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