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自治体の皆さまへ

ーわたしと金山ー No16

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山形県金山町

林 寛治(かんじ)

■金山小学校第1期・校舎の設計について
金山小学校改築計画は、町の事業として中央公民館に次ぐ2件目のRC造(鉄筋コンクリート造)公共建築でした。めばえ幼稚園と保育園の改築を踏まえ、児童生徒が安心して学べる校舎を求める声が町民、町議会から強まったこともあったようです。
岸宏一町長からは、教育の現場と教育委員会との意見交換を密にして良く聞くこと以外の指示は、一切受けませんでした。予算や必要面積規模等についての資料は教育委員会が全て揃えてくれましたが、設計者として私から求めた情報は、校長や教頭よりも専任教職員からの意見聴取でした。私自身、四谷第六小学校、金山小学校、柏崎小学校と異なる小学校での転校生経験をしましたが、先生方が教育職場で何を考え、感じているかを知りたかったのです。しかし設計・計画進行中に話をできたのは、校長先生との一回きりで、伝えられた先生方からの要望は掲示板を旧校舎よりも大きく採ってくれということのみでした。
疎開した金山小学校では真夏の蒸し暑さと吹雪の冬を、吹き抜けの屋体教室で体験しましたから、新校舎に対しては、夏は風通し良く、冬は可能な限り太陽光が全普通教室の奥まで届くようにすることを心がけました。
限られた予算の中で、耐寒対策として東北地方では未だ一般化していなかった窓全体のペアガラス(2重ガラス)仕様として、断熱効果を高めることにしました。ペアガラス化は後に続く有屋小学校、中田小学校でも通例となりました。
当時、学校建築の暖房は石炭や薪のストーブから集中暖房に変わりつつありました。しかし低学年と中高学年では授業時間帯が大きく異なることや、図工・家庭科教室等、特別教室の使用時間が同時使用にならないことから、すべての部屋の面積に応じたFF式灯油ストーブ暖房を個別操作する方式としました。旧式に見える暖房方式ですが目に見えて省エネ効果は大きかったし、FF灯油ストーブの交換が簡略であることも維持管理に利したと考えます。ある時、岸英一元町長から呼び出され、下校した誰もいない低学年教室でストーブがガンガンに焚かれている…とお叱りを受けたことがありました。残務を職員室ではなく教室で行うことを好む先生もおられたのかもしれません。教育委員会を通じてやんわり注意してもらいました。
各教室開口部は空が広く見えるように大窓を上に、小窓を下にしています。着座姿勢で目の高さが小窓の中心位だと、よそ見した時に落ち着きますし、小窓は身体を乗り出すこと無しに容易にガラス拭き出来るからです。後の現・診療所病室の窓も同じ考え方です。ここまで基本的な機能についてのみを記しました。
岸宏一町長からの指示がなかったことが逆に重圧になりました。それは金山の建築が地域に根差しつつも普遍的であるべきであり、公共建築は特に一過性の流行建築にしない、という暗黙のサインでもあったからだと思います。
前鈴木洋町長時代の2013年に、耐震補強工事に合わせて1回目の大規模補修を行いました。このときヴォールト状(かまぼこ型)のガラスブロック製大天窓を撤去することも考えられていましたが、東日本大震災、秋田沖地震、上越沖地震にも耐えたことに鑑みて電力省エネを考え教室のLED照明化を優先することにしました。大屋根は下地とともに朽廃状況でもあったので、上屋根を被せて遮熱空気層をもつ二重屋根としました。軒の出が深くなったことで下の雨受け溝からずれていますが、これは校庭側中庭とともに次回補修時の宿題としました。

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