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【連載】随想 町長の見て歩き(157)

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山形県飯豊町

■『にんにくと玉ねぎ』
後藤幸平
颯爽と登壇し滔々(とうとう)と淀みなく挨拶する。ときおりユーモアを交えてほろりとする場面も忘れない。聴衆の反応をゆっくりと確かめながら伝えるべきポイントを外さない。そんなことが出来たらいいといつも考えている。ところが現実はそう甘くなく、まず登壇までの歩き方が自分が思っている姿とは違うらしい。「前かがみ」になって「がに股だ」などと評価は辛辣(しんらつ)である。気になって、家人に動画を撮ってもらったり身近な同僚に聞いたりしてみても不安は広がりこそすれその払拭(ふっしょく)には程遠い。
語りかけるときは情感が底流になければ人を感動させる話はできない。筋書きは自分で考えないと心通う話にはならないだろう。あとは、体力である。書くにしても話すにしても相当な体力がいる。寝不足だったり疲れがたまっていたり、心配事が深刻だったりすれば上手く行かないことが多い。
だれでも、悩みや不安が無いなどということは恐らくあり得ない。政治家や行政府は安全で安心な暮らしを保障しようと発言する。仮にそれが実現したとしても、社会ではなく個人の胸中に渦巻く不安な感情がなくなることはあるはずがない。そこを解決する策はあるか。ある。健康的な食生活である。適量のご飯とバランスのとれた食事、にんにくと玉ねぎ。朝食での目玉焼き。畑から摘み立ての野菜。最近、飲む酢もかなりいいと聞いた。
大体において「順風満帆」などは幻想と思ったほうがいい。荒波の先にこそ幸せの青い鳥が舞うのである。苦労なく過ごせば他人の苦しみがわからなくなる。その状況こそが不幸な結末をもたらす。そしてできるなら感性を共有する誰かひとり身近に欲しいものだ。いなければ山に向かって手を合わせよう。
十月の空は澄み、萩と金木犀が庭を彩る。収穫した麦を焙煎してお茶にしよう。柿の色づきは間もなく、新米の「つや姫」は食欲をそそるだろう。体力の衰えを回復させるに十分な恵みがいいでの森と麓の畑、田園散居村に広がっている。

■9月号の訂正
下記のとおり訂正いたします
・ポートレット→ポーレット
・ボストンバック→トランク

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