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特集「人生会議」をはじめよう(2)

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山梨県上野原市

対談 人生会議「住み慣れた地域で自分らしく」
上野原市長 村上信行×上條内科クリニック 上條武雄医師

上條武雄(かみじょうたけお)医師
上條内科クリニック院長。在宅医として地域医療を支える傍ら、医師としての経験を踏まえた人生会議の普及啓発を行う。

■どう生きるか
○誰にでも起こりうる「もしものとき」
村上市長…妻と二人で子供たちのことなどを話しているときに、これからのことや「もしものとき」について共有するようにしています。
上條医師…人生会議において重要なことは、想いや考えを周りの人と共有すること。そういう意味で村上市長は人生会議が実践できていると言えますね。
村上市長…私自身のことを言うと、やはりこれからも自宅で過ごしていきたい。最後は上條先生のような人に診てもらいながら、自宅で生きていきたいと思っています。
上條医師…もちろん中には、施設を希望される人もいるとは思いますが、自分らしさって何だろうと考えたときに、自宅で家族と過ごしたいと思っている人が多いことは、肌感覚でわかります。
村上市長…上條先生には、医療体制が十分とは言えないなかで、市の在宅医療を支えていただいており、感謝しています。
上條医師…近年、在宅医療を希望する人は増えてきてはいます。数字的には、私が診察できる人数の倍くらいのニーズがあるように感じています。
村上市長…過日、市内の65歳以上の住民を対象としたアンケート調査を実施した結果、6割以上の人が自宅での生活を希望されていることがわかりました(表1「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」(令和5年1月実施))。希望として、在宅で暮らしたいというニーズが実際にあっても、その通りになっていない現実があるということですね。

上條医師…そうですね。望んでいないけれども、結果的に施設や病院に入るケースもまだ多いです。そして、在宅医が圧倒的に足りていないことも影響しているのではないでしょうか。
村上市長…家族に看取られながら、自宅で最期を迎えられるというのは最高の贅沢だと思います。でも、子どもたちに迷惑をかけたくないから施設や病院を選ぶという人が多いことも承知しています。
上條医師…必ずしも自宅でなくとも、自宅と同じような温かい環境がある施設ということであれば、それはそれで大事な選択肢だと思います。
村上市長…昔と比べて、施設の種類も増えたと感じています。
上條医師…過ごす場所の選択肢が、すごく増えたとも言えますね。

■上條医師の取り組み
○なぜ人生会議が必要か
上條医師…例えば、臓器提供でもあるように、事前に意思を示しておかないとその希望通りになりにくいですよね。また、事前に準備をしておかないと、望まない医療につながってしまう可能性もあります。事前に意思表示ができていて、周りの人と共有できていれば、ご本人の希望がより叶えられやすくなります。これが人生会議をする意味です。
村上市長…意思表示ができる元気なうちからというのがポイントですね。
上條医師…そうですね。意思や想いは変わることがあるので、繰り返し行うこともポイントです。

○人生会議を考える場面
村上市長…人生会議を行うのに適切な場面やタイミングはありますか?
上條医師…大きく分けて3つのパターンがあると思います。(1)定年や還暦を迎えたとき、(2)療養が必要になったとき、(3)死に直面せざるを得なくなったときです。この3つの場面を意識して、主治医として人生会議を実践していますし、一般市民に対しても積極的に啓発を行うようにしています。
村上市長…厚生労働省の統計調査(表2「令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」)を見ると、人生会議の認知度がまだあまり高くないようですね。市としても、今後、人生会議に関して普及啓発を行っていかなければならないと感じます。

上條医師…「死」へのためらいや縁起でもない、考えたくないという想いが根底にあるのだと思います。まずは身近な人とこれからをどう生きるかという視点で、人生会議を始めてもらえるといいのではないでしょうか。
村上市長…そういった点でも今回の特集は、多くの人に人生会議について知ってもらういい機会になると思っています。

○理想の最期について
村上市長…私自身は「健康で長生き、安心してバイバイ」という最期が理想です。色んな意味で元気に安心し最期を迎えたい。また、人に向かっては「とにかく長生きしてね」と伝えるようにしています。そう簡単に諦めるなよという意味です。
上條医師…私も健康で最期を迎える流れがいちばん良いと感じています。そのために多くの人が、介護予防や長患いをしないように努力されているんだと思います。そうは言ってもどうしても療養期間は誰かのお世話にならなくてはならない。その期間をどのようにその人らしく過ごせるか、私たちも体制づくりに努めていかなければなりません。

○これからの人生を考えることも人生会議
上條医師…人生会議と言うと、とかく人生の最終段階ということが注目されがちですが、これからの人生をどのように生きたいのかを考えることも人生会議です。
村上市長…これからの人生について、心の余裕があるときに考える時間を持つこと、考えを家族などと話し合ったり、伝えたりしておくことが、かけがえのない人生を豊かにすることにもつながるということですね。

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