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特集「人生会議」をはじめよう(3)

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山梨県上野原市

これからのこと、決めなくてもいいから、たくさん話しをしよう

人生会議の対象は、終末期や慢性疾患の患者さんだけではなく、年齢や健康状態を問わずあらゆる状態の人が含まれます。細田直希(ほそだなおき)さんと浩希(ひろき)さんは、筋ジストロフィーを抱えるご兄弟です。弟の浩希さんが18歳(成人)になったのをきっかけに、主治医である上條医師から人生会議についての働きかけがありました。細田さんご家族に人生会議を体験した当事者としての感想や今後の想いについて、語っていただきました。

筋ジストロフィー
筋肉が徐々に弱っていく病気で、国が指定する難病の一つ。手足だけでなく呼吸の筋力も低下するため人工呼吸が必要になる。細田さんご兄弟には、心臓機能障害も見られる。

■自分らしい生き方
章さん(父)…病気が発覚したのが、兄の直希が3歳のとき、弟の浩希が5か月くらいのときでした。血液検査で数値に異常があり、専門の医療機関で診てもらったところ、難病の筋ジストロフィーであることが分かりました。現在、2人とも指先は動かすことができますが、腕を上げることはできません。自宅では車いすでの生活をしていますが、常に介護が必要な状況です。
上條医師…ご兄弟は、心臓の機能や呼吸する筋肉、痰を出す力の衰えなどもあり、夜間はマスクタイプの人工呼吸器をつけています。今は口を覆うマスクですが、今後それがうまくいかなかった時には、喉に穴を開ける気管切開という段階に移行する可能性もあります。
村上市長…私の親族にも頸椎を損傷した人がいます。近くにいる人がケアにあたっていますが、家族の大変さは身にしみて分かります。
敦子さん(祖母)…支援学校の送り迎えのときに、市長はいつも挨拶に来てくれるので、大変ありがたいです。心強く感じています。

■細田さんご兄弟と人生会議
上條医師…浩希くんが18歳の成人になるというタイミングで、自分のことを自分で決めるべき年齢になってきたということで、主治医である私から人生会議について話を持ちかけました。
章さん(父)…本人たちと家族のほかに、医師、看護師、通所事業所、ヘルパー、計画相談員など多くの人たちに参加してもらい、人生会議をしました。
上條医師…現在は医療が発達しているので、症状の進行をだいぶ遅らせることができるようになってきました。しかしこの先、新たな医療を受けるときに、どういう医療を受けたいか、どこでどう過ごしたいかを自分で考えていかなければならない。その取っかかりとしてご家族に人生会議の話をしました。また、自分らしさって何だろうということを考えるためのツールとして、「想いのマップ」を活用しました。

『想いのマップ』…「これまでの歩み」、「今」と「これから」の想い(こうありたい)について言葉で書いて形にすることにより、本来の気持ちを考えるきっかけとするもの。(山梨県中北保健福祉事務所作成)

■住み慣れた上野原でこれからも暮らしていきたい
○これからも大切にしていきたいこと
章さん(父)…これからも家族5人で暮らしていきたいです。兄の直希は親である私たちのことも気遣ってくれていることが分かります。
村上市長…頼れるご家族がいること。何より上條先生がいることは心強いことだと思います。やっぱりおうちがいいよね?
直希さん・浩希さん…(頷いて応える)
章さん(父)…私も仕事をしているので、妻と祖母がいて何とか生活が成り立っています。家族5人だからこそ、直希と浩希の生活が成り立っているところはあると思っています。

■これからのこと決めなくてもいいからたくさん話しをしよう
村上市長…どんなに生きられても人生は百年ほど。それでも、宇宙の長い時間の流れからすれば、一瞬に過ぎないことです。生きている間に自分の納得できる一瞬を作りたいと誰もが思っているはずです。皆さんのその想いが実現できるように、私自身もこれから頑張っていきたいと思っています。
上條医師…人生会議において重要なことは、「これからのこと、決めなくてもいいからたくさん話をしよう」ということなんです。細田さんご兄弟の人生会議でもそれを意識していました。

■選択肢のある生活を
章さん(父)…直希を大学に行かせてやりたい希望はありましたが、介助者がいないと難しいということで、断念せざるを得ませんでした。今でこそ、市内に通う場があって、楽しく過ごしていますが、それでも十分な選択肢があるとは言えない現状です。機会があれば、市長にもぜひお時間を作っていただいて、実際にこの子たちの日常の様子を見ていただきたいと思っています。
敦子さん(祖母)…今は家族で看るようにしていますが、もし家族に何かあった場合には、2人には行く場所がありません。
浩美さん(母)…何かあったときに看れなくなるという不安は常にあるので、色んな部分で充実してくれるといいと思っています。
章さん(父)…今日は、私たちと同じ境遇にあるご家族の思いも背負って対談に来たつもりです。障がい者であっても、選択肢のある生活を送れるよう、今後もお力添えいただきたいです。
村上市長…細田さんご家族の想いが叶うように、私も頑張ります。

■細田さんご兄弟の人生会議に参加した医療・ケアチームの皆さんに聞きました
○相談支援事業所ひまわり 尾曲(おまがり)さん
ご本人が希望する生活を叶えるために、自分を知ること、地域を知ること、そして何ができるかをみんなで考え、共有することができました。

○ケアステーションにんじん・上野原 木村(きむら)さん
人生会議に出席させていただいて、支援の現状把握とご家族の願いを直接聞くことができ、今後の支援を考える良い機会となりました。

○Nuts訪問看護ステーション 竜沢(たつざわ)さん・清水(しみず)さん
細田さんはもちろんのこと、他の利用者さんの地域での生活を支援する上で、多職種の連携・協力の重要性を再認識する機会となりました。

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