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【特集】“森林を小さな林業で未来につなぐ”「自伐型林業」はじめました(1)

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岩手県一関市

■恵みをもたらす森林の新たな守り手を育てる
近年、森林所有者が、伐採などの管理・経営を自ら行う「自伐型林業(じばつがたりんぎょう)」が注目されています。
森林は、水を蓄え、二酸化炭素を吸収し、土砂災害から安全な暮らしを守るなど、さまざまな恵みをもたらしています。
また、キャンプ、紅葉狩りや森林浴などで私たちに活力を与えてくれます。
林業は、森林所有者に代わり森林組合などが施業を行うのが一般的です。自伐型は低コストで参入しやすいなどの利点があり、若い世代の参入例が全国各地で見受けられます。
本市でも、広大な森林の管理を多様な担い手で支えるため、自伐型林業の推進に乗り出しました。本年7月には、自伐型林業を実践する地域おこし協力隊として3人(大東町京津畑集落に移住)に委嘱。一関の「山守(やまもり)」を育てる事業に着手しました。
今回の特集で、自伐型林業の特徴や現在市が行っている取り組みなどを紹介します。

■森林と林業を巡るさまざまな課題
本市は、総面積の約6割を森林が占めています。その森林面積のうち、4割を占めるのが人工林です。木材生産に適したスギやヒノキなどを人為的に植えた人工林では、植林後、人の手による管理が欠かせません。
しかし、森林所有者の山への関心の低下や林業従事者の高齢化、後継者不足などで管理の行き届かない森林が増えています。
人工林は50~60年で伐採され、跡地に再び造林することで資源循環が図られます。蓄えられた森林資源は、また建築用材などに利用することができます。
近年、伐採跡地面積に対する植林面積の割合は2割程度にとどまり、「伐(き)って、使って、植えて、育てる」といった木材の理想的な循環系が途絶えることが危惧されています。
人工林の手入れが行き届かず、放置されると、日光が地面まで届かないため、草が生えず、土砂が流れやすくなります。森林を手入れし、木を健全に生育させることで、良質な木材が生産され、二酸化炭素の吸収量も増加し、地球温暖化防止にもつながります。
森林を価値のあるものとして、後世に引き継ぐためには、森林を守り、大切に育てる必要があります。

■木を残しつつ収入を得て山を育て続ける林業
森林所有者は、林業を自ら行うことは少なく、専門的な技術や大型の林業機械を所有する森林組合や民間の林業事業体に作業を委託することがほとんどです。
自伐型林業は、森林所有者などが所有する森林や身近な地域の森林の手入れを行う小規模な経営形態です。
一定区域の木をまとめて伐採する皆伐のように一度に大きな収入を得ることはできませんが、生育不良などの木を2割程度で伐採する間伐を何度も繰り返し、森林に残った木の質と量を高めていきます。手間と費用がかかる植林や下刈りを50年程度の周期で繰り返すのではなく、山に木を残しつつ、間伐材の販売収入を定期的に得ながら、高額で取引される樹齢100年を超える木を育てていきます。

■持続的な作業道づくりで経済性と環境保全を両立
自伐型林業は、最初に間伐材を山から運び出すための作業道を整備します。作業道は、環境に与える影響を極力抑えた幅2.5メートル以下の規模で、山の地形や水の流れなどを考慮したルートを選び、小型油圧ショベルで間伐した木や石などを利用しながら、壊れにくく頑丈に作ります。
このような作業道を山の中に張り巡らせることで、伐採した木を集めやすくなり、間伐材を運ぶ費用を抑えることができます。
近年は、集中豪雨による土砂災害が全国で多発しています。傾斜が急な山では、大規模な皆伐跡地や環境を考慮しないで作られた作業道が土砂災害を誘発する可能性もあります。
自伐型林業では、林業のコストを抑える経済性と環境保全を両立させた道づくりを進めています。

■林業と副業によるなりわいづくり
全国の中山間地域で営んでいる自伐型林業者の多くは、農業や観光などほかの仕事と林業を兼業し、生計を立てています。高額で大型の高性能林業機械を必要とする林業事業体に比べ、自伐型林業は軽トラックや小型の油圧ショベルなど初期投資が比較的少ないため、森林所有者個人でも参入しやすいのが特徴です。間伐材を薪(まき)や木工品などとして付加価値を付けて販売するほか、整備した森林でのキャンプ場経営や作業道を活用したアクティビティに取り組むなど、多様な森林資源の利活用が図られています。

■新たな担い手の育成事業を開始
自伐型林業推進の最初の取り組みとして、なじみのない自伐型林業を市民に知ってもらうためのフォーラムを5月27日に開催しました。
7~10月には、自伐型林業を体験する研修を2日間連続で4回開催。チェーンソーの取り扱い講習から始まり、専門家からの指導を受け、森林内で木を伐採し、枝を払って丸太に切りそろえる作業、丸太を小型の運搬車で集めて運ぶ操作や小型油圧ショベルでの作業道づくりなどを体験しました。
中山間集落で林業に従事し、副業でなりわいを創出することをミッションとした地域おこし協力隊を5月に募集。7月に3人が着任しました。協力隊員は3年間、市主催の研修などに参加しながら林業の技術を学ぶとともに、林業と組み合わせる副業の創出、林業を行う森林の集約に挑戦しています。

■小さな林業から未来を切り拓く
市は、教育施設の暖房に使う熱エネルギー源に間伐材を活用したり、薪ストーブ設置費補助金を交付したりして、木材の積極的な活用を進めています。
自伐型林業者の育成による林業の活性化がさまざまな相乗効果を生み、一関市ならではの自然を生かした豊かな暮らしが、都市住民を引き付け、移住者を呼び込むなど、里山の未来を切り拓く原動力となることが期待されています。

問合せ:本庁林政推進課
【電話】21-8195

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