文字サイズ
自治体の皆さまへ

視能訓練士のお話

8/32

島根県雲南市

■「子どもの近視を予防しよう!!」
医療技術部検査技術科 視能訓練士 小野 悦盛(おのえつもり)

近年、日本や韓国、シンガポールなどの東アジア・東南アジア諸国において、近視人口は爆発的に増加しており、高校卒業までに80~90%の人が近視になるといわれています。また米国やヨーロッパ諸国においても、近視の人口は増加の一途を辿っており、世界的な問題となっています。そこで、今回は「小児の近視予防」についてお話します。

◯目の発達
心や体が成長し発達していくように、目も生まれたばかりの新生児では明暗がわかる程度の視力しかなく、目の大きさ(眼軸長)は約17mmです。その後急激に成長・発達し、3歳ごろになると視力は1.0に、眼軸長は22mmほどの大きさになります。それからは緩やかに、視力は9歳ごろまでに完成し、眼軸長は成人で24mm程度になります。

◯近視とは
目が良い状態(正視といいます)の方は、遠く離れた物体や景色などが目の奥の網膜上に結像するため、遠くのものがはっきりと見えます。そしてピント調節をする(できにくくなる状態が老眼です)ことによって近くのものもよく見えます。これに対して、近視の方は、近くのものははっきりと見えますが、遠くのものはぼやけて見えにくい状態になります。近視の方のほとんどは眼軸長が伸びて長くなることで発症します。

《正視》
網膜上にピントが合う。
遠くも近くもよく見える。

《近視(軸性)》
網膜の手前でピントが合う。
近くは見えるが、遠くは見えにくくなる。

※詳細は広報紙13ページの図をご覧ください。

◯近視発症の原因
遺伝と環境要因の両方が原因と考えられています。環境要因としては勉強や読書、タブレットやスマートフォンの画面を見る時などに、長時間であるほど、見る距離が近いほど(30cm以上で離して見ることを推奨)近視になりやすく、進行もしやすいと考えられています。屋外活動が少ないことも要因となります。

◯近視が進むとどうなる?
近視が進行することにより、眼軸長が伸びて眼球組織が薄くなります。近視の中でも「病的近視」という状態になると、網膜剥離や黄斑変性、緑内障などさまざまな眼疾患を引き起こし失明することがあります。令和元年度の全国調査では、中途失明(視覚障害1級)の原因疾患として5番目に多い疾患になっています。

◯生活の中で近視を予防するには?
日常の生活習慣を見直すことで近視の進行はある程度予防することができます。
個人差もありますが8歳前後をピークとして5~15歳くらいまでが最も近視が進行しやすい時期になりますので、この時期は特に近視が進行しないような生活習慣を身に付けることが大切です。
1 勉強・読書・ゲームなどのように近くで物を見る作業を20~30分したら20秒以上は外の景色など遠くを眺めて休憩する。
2 暗いところで読み書きをしない。
3 必要以上に眼を近づけてものを見ない。(少なくとも30cm以上は離す)
4 1日にできれば2時間は外で遊ぶようにする。(日光を浴びる)
5 良質な睡眠をとる。(早寝早起き)
※米国眼科学会議は、「20-20-20」ルールといって20分に1回、20秒間、20フィート(約6m)離れたところを眺めることを推奨しています。

◇あとがき
軽い近視は、現代の近くを見ることが多くなった環境に対する適応であるとすれば仕方ないことかもしれませんが、近視になる年齢が早ければ早いほど、強い近視(病的近視)になりやすいので注意が必要です。近視を予防する方法が世界中で研究されていますが、まだ実用には至っていません。近視にならない、進ませないような生活をすることが大切です。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU