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特集・ほたるの里 ー棚田と風景ー (1)

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愛媛県東温市

夏の1日は長い。昼間の暑さから一変、夕暮れの気温の変化とともに虫の鳴き声が鳴り響き、思わず外出したくなる。
河之内地区に流れる表川は西に重信川を望み、周辺には棚田や緑豊かな自然に囲まれる。昔ながらの日本を感じられる棚田一体の風景は「ほたるの里」と呼ばれ親しまれている。ほたるの里には毎年初夏に多くの蛍が輝きを見せ、自然豊かな場所で自由に行き交う蛍はたくさんの人を魅了する。近年は市内外から多くの人が蛍を見に訪れ、景色を目の前に感嘆の声を上げる。ほたるの里は今や市内で蛍鑑賞ができる観光スポットとなってきた。
「日本の古き良き風景を残したい」と発足した「雨滝ほたるの里を守る会」。毎年、地元の皆さんを中心に蛍が飛び始める5月中旬にほたるの里を整備する。

ほたるの里の整備は今年で12年目を迎えた。ほたるの里は人々にどんなことを残してきたのだろう。今月は、ほたるの里を整備する皆さんを取材した。

■光のない棚田の夜を彩る
「雨滝ほたるの里を守る会」の坂本憲俊さんは「自然の中で多くの蛍が見れる場所は近年少なくなっています。この環境を守るべきだと感じています」と話す。ほたるの里はゲンジボタルやヘイケボタルが飛び、時期によって2種類の蛍が飛ぶ。蛍の放流などはせず、自然のままの蛍を見ることができる。こうした風景を見られるのは全国的には珍しい。
ほたるの里をつくるときのルールは「車は入れない」「光は最小限に」「蛍まつりはしない。蛍まつりは蛍がする」。「人が多く訪れるとライトや懐中電灯などたくさんの光が照らされ、光に敏感な蛍の棲家を奪ってしまう恐れがあるので祭りは開催しないと当初から決めています。農道に電灯を設置していますが、懐中電灯よりも光の弱いソーラーライトにしたり、川の側には置かないようにしたりなど蛍に配慮しています」と話す。
5月21日、今年も雨滝ほたるの里を守る会のメンバーや地元のボランティアなど30人を超える人がソーラーライトの設置や草刈りのほか鉄柵を整備した。雨滝ほたるの里の代表の菅野林次さんは「蛍が見れる時期に猪も里に降りてきます。鉄柵に竹や鉄パイプを巻き付けていましたが、それでも猪が壊してしまうこともあり、毎年試行錯誤しています。害獣対策は、蛍を安全に見てもらえるために欠かせませんが、何より米農家にとって必要なことです」と菅野さんは話す。
蛍鑑賞ができる時期は棚田に苗を植える時期と重なる。毎年、河之内地区の棚田で作られている米は美味しさに定評がある。
「棚田の整備をする中でほたるの里づくりが始まりました。来てもらうことでほたるの里のことを知ってもらい、ここで作られた米を食べてもらいたいと思っています。棚田を守りたいという農家の皆さんの思いが、ほたるの里づくりへと繋がりました。蛍の生息地を守ることと棚田を作ることは切っても切り離せません」と坂本さんは話す。

◇雨滝ほたるの里を守る会 坂本 憲俊(のりとし)さん(河之内)
当初は10人ほどで整備をしていたほたるの里づくりですが、今では多くの人が整備に来てくれるようになりました。長く続けていると棚田のことを知る人も増えて嬉しい限りです。
私ができることは、ほたるの里を守っていくことと次に繋いでいくことだと思っています。これからもほたるの里のファンの人が増えるように活動を続けていきたいと思っています。

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