■「関心人口」を増やし、数十年後も輝く棚田へ
まちの誇りを未来へつなぐ。そのためには何が必要なのでしょうか。
棚田を専門に研究などを行う、山路永司さんにお話を伺いました。
全国の棚田を見てみると、東日本の多くは土で、西日本の多くは石垣で作られています。石垣は手間が掛かりますが、広い水田面積が取れるのがメリット。千町の棚田の第一印象は石垣の積み方がものすごく個性的で立派だなと。全国の棚田を何箇所も見ていますが、地域ごとにだいたい同じ積み方をしています。千町の場合は、積んだ農家の個性が表れていて、見え方が違うけれど、それぞれきれいですね。まさに先人たちの知恵であり、魅力的な部分です。
全国の水田の約1割が棚田といわれていますが、そのうち4分の1が耕作されていません。棚田を守るには、まずは関心人口を増やすこと。興味を持ってもらうことが大切です。例えば、フットパス(散歩道)を作るのも一つの手段。行くきっかけというか、選択肢を増やすことで、まずは一回訪れてそこから興味を持ってもらい、お米作りに参加したり、イベントに参加したりなど、活動に関わってもらう。住むことだけが守ることではないので、訪れること、関心を持つことが、つなぐために必要です。地元の誇りでもある千町の棚田。10年後、20年後、今よりもさらに元気な棚田であってほしいと思います。
山路永司(えいじ)さん
西条市上神拝出身。東京大学名誉教授・棚田学会会長。イベントやシンポジウムなどを通じて棚田保全をサポート。
■棚田を未来へつなぐために
僕ら子どもの時やと、70年も前くらいだけど、稲刈りをする時期はもう見渡す限り、黄金色(こがねいろ)やった。田んぼが2,500枚ぐらいあったかな。でも、年数を重ねるごとに、人も風景も変わっていった。住民もよけおったけど、今は10人くらい。
ここ千町での経験は子どもたちにとっても、きっと特別なものになると思うので、僕も活動に参加したいけど、体調の関係もあって今は応援する立場。NPOとか大学とか銀行とか、いろんな団体がそれぞれ活動しているので、自治会長として住民の間に立って見守っていきたい。
全部を戻すことは不可能ですが、いろんな人が関わって、少しでも活気のある千町地区でありたいですね。
千町自治会長 伊藤友之(ともゆき)さん
■棚田のこと、もうちょっと知ってみませんか?
▽うちぬきフェスティバル
日時:12月10日(日)10時~14時
場所:西条図書館北側中央緑地
NPO法人うちぬき21プロジェクト主催イベント。棚田米の販売や竹灯籠製作体験などを実施。そのほか、抽選会やマルシェ、フリーマーケットも。
▽西農生「草刈りイベント」
日時:1月27日(土)9時30分~13時
場所:千町の棚田
ライトアップイベントに向けた西条農業高校棚田チーム考案のイベント。内容などは未定。参加希望の方は電話にて受付中。【電話】090-4504-2391(成髙)
▽ライトアップイベント
期間:2月24日~3月16日までの毎週土曜日18時~
今年で4回目を迎えるイベント。約300個の竹灯籠が石垣に並び、千町の棚田を彩ります。
▽えひめ景観シンポジウム2023
11月2日に「千町の棚田」をテーマに西条市で開催されたシンポジウム。今特集で登場した山路さんや成髙さん、山内さん、西条農業高校生などの講演の様子が動画で見れます(11月中公開予定)
▽棚田・段畑HP「愛媛のたなだん」
棚田・段畑についての解説のほか、県内の棚田の紹介も。棚田の魅力を詰め込んだホームページです。年度内には千町の棚田のプロモーション動画も公開予定。
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